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もうお前を離さない314

「できるさ」
宮野は村越の言葉に間髪を入れずにそう言った。村越は顔を上げて宮野を見る。
「…ていうより、頼みたいくらいだよ私ゃー」
「…ふふっ。…分かった、頑張る」
「ラスト勝負だ。互いに頑張ろう」
宮野はそう言って肩の上に手を上げた。村越も同様に持ち上げ、そしてぱしん、と互いに手を叩きあった。
「…ハイタッチなんて久しぶりだな」
「…確かに」
「……………」
「…。ぶふっ」
「!あはは!」
宮野が吹き出したのをきっかけに楽しそうに笑う2人を見て、真田は小さく拳を握った。
「…黎凪」
「!幸村ごめん!放置してたね」
「楽しそうなお前が見れたから十分だ」
「え?あ、そうなの?」
「…、戦場は俺に任せておけ。三成殿も大谷殿も、死なせはせぬ」
「!…、ありがとう。でも、幸村も死んじゃやだよ」
「むぅ。善処するでござる」
真田はそう言うと小さく笑い、わしゃわしゃと宮野の頭を再び撫でた。


 「村越」
「!は、はいっ!」
その後3人は天守閣で別れ、宮野と真田は武田軍に割り当てられた場所へ戻っていき、村越は昼餉の片付けをしていた。
と、そこへ、細長い箱を持った石田が現れた。普段炊事場になど来ない石田に首をかしげながらも村越は石田に駈け寄った。
「どうしたんですか?」
「貴様にだ」
「?」
石田はそう言うと細長い箱を村越へと差し出した。村越はきょとんとしながらもそれを受け取り、開けた。
「!」
入っていたのは一振りの日本刀だった。柄は白く、鞘は石田の刀と同じ柄。そして鞘には薄紫の紐が結わい付けられていた。
村越は目を細める。
「…長曾我部のですね」
「………使うか」
「…使います。例え今は敵だとしても…この刀が私の体に合っている事は確かです」
「……意外だな」
「え?」
「貴様なら使わないだろうと思っていた」
石田の言葉に村越は苦笑いを浮かべた。
「………確かに、本音を言えばあまり使いたくないです。でも…これを作ってくれた時は確かに、長曾我部は味方でしたから」
「……………」
「それに、私みたいに弱いのがそんな贅沢言えませんよ」
石田は黙って村越を見下ろした。村越は石田に笑ってみせる。
「万が一、変なカラクリがあったらすぐ捨てますから」
「…関ヶ原の戦…来るのか」
「…。私は、行きたいです」
石田の問いに村越は僅かに驚いた様子を見せた。だがすぐにそう、言った。石田はじ、と村越を見つめた後に箱から刀を取り出し村越に手渡した。
「少しだけ抜け」
「?はい」
村越は右手に持った刀を僅かに抜いた。現れた白銀の刃に、かちん、と同様に僅かに刀を抜いた石田は刃を合わせた。
「…死ぬことは許さない」
「…これは……?」
「…武士は、本当に違えぬ約束はこうするのだと、半兵衛様が」
どこかこっぱずかしそうにそう言うと石田は刀を納めた。村越は刀を見下ろし、納めるとぎゅうと刀を抱きしめた。そして笑った。
「…分かりました、誓います。死んでも帰ってきます!」
「貴様な…」

「だから、三成さんも、無理はなさらないでください」

村越の言葉に石田は僅かに驚いて村越を見下ろした。村越はじっと石田を見上げている。
石田はぱちぱちと何度か瞬きした後、ふっ、と薄く笑った。
「…貴様だけだ」
「え?」
「私にそのような事を言うのは貴様だけだと言っている。…、悪くはない」
「?!そ、そうですか?」
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