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もうお前を離さない315

「心配すると怒るのに」
ぶー、と頬を膨らませた村越に石田はふんと鼻を鳴らす。
「心配される程弱くないと言っているだろう」
「心配するのは三成さんが弱いからじゃないです!大切な人だから心配するんじゃないですか!!」
「…。大切?」
「はい!」
「貴様は私が大切なのか?」
「そうですよ?」
「何故だ?」
「大切だから大切なんです!」
「答えになっていないぞ」
石田の言葉に村越はきょとんとした後、そういえばそうですね、と笑った。
「でも、そうなると特に理由はないですね…」
「理由が無いのに大切なのか?」
「はい。きっかけはなんであれ、今の私は三成さんが大切です」
「………」
村越はそう言って、えへ、と笑った。石田はじ、と村越を見つめた。村越も見つめ返す。しばらくそんな風に見つめあった後、石田は不意に村越の顎を掬い。

その唇に口付けた。

「……えっ………?!」
「……。?!な、な、な、」
一気に顔を真っ赤にさせた村越に石田の顔も赤くなった。無意識の行動だったらしい、持ち前の速さで一気に数メートル後退った。村越は己の口に手をあて、目を見開いている。
「え、あ、あの…」
2人は互いに真っ赤になったままおろおろとした。石田も顔に手をあて、視線を忙しなく動かしている。
「わ、わた、私は…?!…む、村越…」
「…は、はい……」
「その……き、貴様は…。…貴様は初めてか?!」
その内に石田はどこか開き直ったように再び村越に近寄り、がしりと肩を掴んでそう尋ねた。村越は驚愕に固まりながらも石田を見上げた。
「…あ…」
「こ、答えろ!」
「あ…一応……はい」
「…!す、すまん……」
「すまん…?なんで謝るんで「私とて男だ!…責任は取る!」へっ?責任て何の…」

ぎゅう、と。
不意に己を抱き締めた石田に村越の言葉は止まった。
「…みつ、なりさん…?」
己の体を包む温かさに、村越はぽかんとしたままそう呟いた。石田は真っ赤な顔のまま、村越の肩に己の頭を乗せた。
「………責任は取ると言っているだろう…ッ」
「――――ッ!!」
責任を取る、その意味を理解した時。

村越は石田を突き飛ばす様にして石田から離れた。

「ッ!?貴様、……村越……?」
突き飛ばされた衝撃で僅かによろけ、恥を忍んで取った行動を即座にはねのけられ苛立った石田は村越を睨んだが、村越の体が震えている事に気が付き、怪訝そうに顔を歪ませた。
「…すいません…すいません、三成さん私…ッ」
「?!村越!?」
「私…私…、凄く嬉しかったです、でも、でも、私は……私はダメですッ!!ダメなんですッッ!」
村越はそう叫ぶと踵を返して逃げた。石田は今にも泣き出しそうであった村越の顔が頭から離れず、1人その場に取り残された。
「村…越……?」

「…あれ……?」
そして、たまたま通りかかっていた小早川も逃げ去る村越を目撃し、呆然とそれを見送った。
「む、村越さんなんで泣いて…?」
村越の耳にそんな言葉は入らない。走りに走って、大阪城の端まで来ると膝に手を突いてあらぶった息を整えた。
ぼろぼろと両の目からは涙がこぼれ出ている。
村越は拳で目元を覆った。
「ダメ…私が幸せになんか…。三成さんに災いが降り掛かる…!」
村越はそう言うとかくん、と膝を突き、刀をぎゅうと強く抱き締めた。
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