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もうお前を離さない313

「どうして黎凪は信じられるの?黎凪の方がずっと酷い目にあってきたのに」
村越の問いに宮野は笑った。
「元から友達でもない野郎に何言われても気にしないタチだから酷い目にあったとは思ってないよ。私だけじゃなくて芽夷達にまで嫌がらせしてきた奴は何人か物言えぬように脅してやった事はあるけどね」
「おど…ッ。…お前な」
「あはは」
「……………」
「…。私は信じてた人に裏切られた事は今のところない。それに、私は信じられるられないの前に、信じたいと思うから」
「!」
「それが裏切られたら、私の見る目がなかったって事で完結すると思うしね」
宮野はそう言うとカラカラと笑った。村越は押し黙り、視線をふい、と逸らす。
宮野はそんな村越にくすり、と笑った。
「…まぁ、気持ちは分からないでもないけどさ。何事も経験してない事は分からないから、裏切られるのがどれだけ衝撃なのか私には分からないし。……でも、それでも私は自分の信念を変えるつもりはない」
「…………。変わらない自信があるの?」
納得いかない、そう顔に浮かんでいる村越に、宮野は悲しげに笑った。
「……私が今までで一番ショックだったのは、親父に信じて貰えなかった事」
「!」
「…それ以上のショックなんて、そうそう無いよ。兄貴の恋人に殺されかかった時も…そんなショック受けなかったし」
宮野はそう言うと苦笑を浮かべた。真田は宮野を黙って見下ろし、ぽんと頭に手を置くとわしゃわしゃと撫でた。
「……ありがと、幸村」
「ご…ごめん」
「謝るなよ。警察にも同情されたくらいの事だし、それにもう、乗り越えた」
宮野はそう言うとまた笑った。村越は宮野の言葉に少しばかり俯いた後、思い切ったように顔を上げた。
「…、黎凪。黎凪が三成さんを助けるためにここにいる訳じゃないのは分かってる、でも…三成さんを助けて」
宮野は村越の言葉に一瞬驚いたように目を見開いた後、僅かに目を伏せた。
「…三成さんを死なせるつもりはない。でもそれが、三成さんを助ける事になるかは分からない」
「…ッ……」
「それに、私は三成さんに関してはお前の方が出来ると思うけどな」
「え?」
宮野はたんっ、と村越の隣に着地した後廊下に降りた。そこで村越も思い出したように欄干から降りた。真田もひょいと屋根から降りる。
「私より芽夷の方が三成さんと長くいるだろ?」
「それはそうだけど…!…私は長曾我部一人説得出来なかった…」
「その辺は私の仕事だ。口から生まれた女と言われた母親の血をなまじ継いじゃいないからね。それに、三成さんの言葉聞いてなかったのか?」
「え?」
「貴様がいると、家康への憎しみですらどうでもよく感じる、って言ってたじゃん」
「………。……あ…」
「外部からの攻撃は私が防いでやる。だけど、三成さんの心を救えるのは芽夷だけだ」
「……黎凪…」
宮野は村越を見てにやりと笑った。今日の宮野はよく笑う。
「…私に三成さんの心は救えない」
「……でも…私、三成さんの邪魔なんじゃ…」
「三成さんが邪魔だと思う奴を傍にいさせるわけないだろ」
「黎凪、もう少し曖昧に言ったらどうなのだ…」
「とにもかくにも。三成さんは私にちょっと似てる。嫌いな人間と付き合うような人間じゃない」
「…私に……出来る…かな…」
村越はきゅ、と袴を握り締めた。
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