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もうお前を離さない305

「幸村どこ行くのー?」
大阪城から少し離れた林に着いた頃、宮野はそう真田に尋ねた。実の所、宮野も外出の目的を知らされていなかったからだ。
真田は立ち止まり、さく、と槍を地面に刺して立て、宮野の言葉に振り返ると辺りを見渡した。
「…、美濃が関ヶ原の近くには、斯様な林が多いそうだ」
「そうなの?岩山のイメージあったけど」
「佐助に行かせてあってな。…戦後……場合によっては落武者であふれかえるであろう、と」
「ふぅん…。それ…でっ?!」
真田の言葉に周囲を見ていた宮野は真田に視線を戻し、突如迫った拳に驚いて上体を反らして避けた。
拳を握っているのは無論真田である。宮野は困惑しながらも追撃の拳を片足で地面を強く蹴り避け、そのままの勢いで転がり距離をとって起き上がった。
真田は何も言わずに地面を蹴った。繰り出される拳を宮野はぎりぎりの所で流す。
「ちょ、な、な、な、」
宮野は戸惑いながらも本気の真田に何か意図があるのだろうと察し反撃に出た。
真田の右拳を左腕で凪いだ後右腕を交差させて真田の腕をホールドし、右左と地面を蹴り体を浮かせ、跳躍の勢いを利用して右足を真田の頭目がけて蹴り上げた。
真田は左腕でそれを受け、そして掴むと背負い投げの要領で宮野を地面目がけ叩きつけた。
宮野は両手で受け身を取り、その反動で上がった体で素早く真田の襟を両手で掴むと、掴まれていない方の足を真田の腹に当て、後転すると同時にその足で真田を蹴り飛ばした。
いわゆる巴投げされた真田は転がって勢いを消した後、しゃがんだ状態のまま宮野を振り返った。
「流石、取っ組み合いには小慣れておるな」
「急に何なのさ幸村!蹴っちゃったじゃん!」
「黎凪こそ、叩きつけたが大丈夫か?」
「受け身したから平気だよ…じゃなくて!」
「生あるものは、死ぬ間際に最も強くなるのは性欲だそうだ」
真田はぱんぱんと裾を払いながら立ち上がりそう言った。宮野はその言葉だけで、真田が何を言いたいのか悟り小さく吹き出した。
「…つまり?私が死ぬ間際の落武者に襲われた時用に訓練してくれた、って事?」
「…お前は何かと襲われやすいからな」
真田は宮野に歩み寄ると手を差し伸べた。宮野は苦笑しながらその手を取って立ち上がった。
「はは…そんな事心配してくれたの?…、ありがと、幸村」
「今お前は左腕を損傷しておるからな。俺の右腕を固めた時も傷口を気にしていただろう」
「よく見てるね。まぁ、鈍いとはいえ痛いもんは痛いからさ」
「……、黎凪」
真田は苦笑する宮野を静かに抱き寄せた。宮野も、そっと真田の背中に手を回した。
「…黎凪、動かずに聞け」
その時、ぼそり、と真田は宮野の耳元でそう呟いた。宮野は静かに目をほとんど伏せ、薄く開くのみにした。
「囲まれておる。南に4、西に3、東も3、そして北に1。恐らく北の気配は長曾我部殿だ」
「…奇襲かな?」
「分からぬ。俺が西と東とをやる、南を頼めるか」
「火縄…は、持ってなさそうだね。槍の所までどれくらい?」
「一瞬あれば」
「分かった。行くよ。3…2…1!!」
ばっ、と互いに左足で地を蹴った2人はそのまま隣を通りすぎ走った。
宮野は走りながら兜割りを抜き放ち、突然のことに驚いている男の脳天目がけて振り下ろした。
真田も槍を掴むと同時に跳躍して飛び出してきた男達の攻撃を躱し、着地と同時に槍を振るって男達の足をえぐり転ばせた。
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