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もうお前を離さない358

「…情けなくて悔しいよ」
「情けないなど…」
「自分で決めた事だった。…なのに…」
「完全なものなどおらぬ!…お前が恥じるような事は何も、ない」
「…ありがと……幸村」
宮野はそう言って小さく笑うと静かに目を伏せ、俯いた。



 「どこまで行ったんだあの二人…ッ」
その頃村越は、消えた徳川と石田を探してうろうろとしていた。
あまりに2人が見つからないので村越は小さくため息をついた。
「ん?お前は誰だ?」
「?!…えっと……あ、そうだ虎の人」
「ん?!お前は俺を知ってるのか!?」
そして、宇都宮と出くわしていた。
宇都宮はぱちぱちと瞬きを繰り返し、村越を不思議そうに見ている。
「あー…宮野黎凪の知り合いで、村越と申します」
「あー!そうなのか!宇都宮広綱だ!よろしくな!」
「あ、はい、どうも。……あの、両軍の総大将達見ませんでした?」
「ん?石田は見たことないから知らないが、徳川なら見たぞ!黄色い奴だろ?」
「!どっち行きました?!」
「あの坂向かってったぞ。というより、戦が終わったって本当か?」
すぐさま走りだそうとしていた村越は、続いた宇都宮の言葉に慌てて止まった。
「は、はい。毛利が譲歩してくれたので終わりました」
「おぉー!終わったのかー!」
「毛利がなんだって?」
ずい、とそこへ更に尼子が顔を出した。宇都宮は興奮した様子で尼子を振り返り、がしっ、と肩をつかむと勢い良く前後に揺すった。
「やったやった!真田がついにやったらしいぞ!」
「テメ、ゆら、すんじゃ、ね、ぇっ!」
「あだー!」
「なんだろうこの漫才コンビみたいの…。…取り敢えず追い掛けるか」
村越はひとまず2人を放っておくと、今度こそ愚者坂に向かって走りだした。
 少しして、村越は愚者坂の下までたどり着いた。愚者坂の周りは静かで、2人の会話が聞こえてきた。
「ははは…ッ…相変わらず…やはりお前は……速いなぁ…」
「喧しい…家康ぅぅ…」
「そう…言うなよ……。……なぁ……三成、あの子とは、どこで…会ったんだ?」
「………拾った」
「ひろ……った?」
「姉小路が討たれた頃…上田に向かった……その時にだ…。道で………寝てた」
「拾ったってお前…ははは!他に言い方があるだろう?」
楽しそうな声色な徳川と、普段よりも饒舌な石田の会話に、村越は歩みを止めた。
2人の会話を聞きたいと思った。
「…しかし驚いたぞ?」
「何がだ」
「まさか…許されるとは思っていなかったからな」
「ふん。私とて、奴に会わなければ微塵も考えなどしなかった」
「…と、いうと?」
「……言われたのだ。仇を討った後…私はどうなるのかと。私の中の憎しみは消え去るのか…少しでも…平穏は、訪れるのか、とな」
「………そうだったのか…」
ざり、と砂がなる音がした。濁った金属音も聞こえ、どちらかが動いている事が分かった。
「…それ以外にも色々あったが、それで考えたのだ」
「そして、生きる為にワシを追っている、と?」
「…そういう事だ」
「……そうだったのか。あの子はお前の心を、晴らしてくれたんだな」
「…分かったような口を利くな。貴様にそのように語られると無性に腹がたつ」
「ははは、それはすまん。…ところで、お前、あの子とはどういう関係なんだ?はぐらかさずに答えろよ?」
「………さぁな」
「…ッえー?ケチだなぁ三成」
「ただ、接吻はした」
「へぇー。……。えぇぇぇぇっ?!」
「っ喧しい」
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