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もうお前を離さない336

「だだっ、駄目だよ!ううう動いたら死んじゃうよ?!」
「アンタが動かなきゃいい話よ!!」
「むむむ無理だよぉぉぉ!!」
声を頼りに着いた場所には村越と小早川の姿があった。
村越の有様は酷いものだった。右腕は全体に火傷を負っていて、一部は赤く爛れており、胸元からその部分は顕になっていた。顔や左の二の腕はあちこちが擦り切れており、白袴も所々がさけ、血が滴る太股がむき出しになっている。
「村越ッ!!」
石田は思わず村越の名を叫んだ。村越は仰天したように石田を見、同時に、ただでさえ青かった小早川の顔が更に青くなった。
「ひぃぃぃぃぃぃっ三成君?!」
「三成…さ…」
「…ッ」
石田は小早川を一瞬見た後、村越に駆け寄ると強く村越を抱き締めた。
「……Oh!!」
「…あっ!?」
「うおぉ?!」
大胆な石田の行動に伊達、徳川、真田は三者三様の声を上げた。
「三成さ…」
村越は驚いた表情のまま石田を見上げた。石田はぐ、と唇を噛んだ。
「…死んだものと……生きていてよかった…ッ」
そして、そう絞りだすように言った。村越は目を見開き、そして涙を目に溜め、石田の胸に顔を押しつけた。
「……ぅ…ごめんなさい、三成さん…」
「何故謝るッ」
「小早川が裏切ったの……私のせいなんです………」
「…何…?」

――――――――

「う…げほっ、」
突如爆発した本陣の中、村越は爆発から少ししてから意識を取り戻した。
運がよかったのか、これといった大怪我は負っていない。村越は痛む体を起こし、驚愕に目を見開いた。
「な…ッ」
辺りは炎上し、いくつもの骸が転がっていたのだ。
「何が…まさか小早川が……?…ッ!そうだ黎凪!」
村越は混乱しながらも宮野の存在を思い出し、口元を手で覆いながら傍にいたはずの宮野の姿を探した。
宮野は、すぐに見つかった。
「!黎凪!黎凪起きて、本陣が…!」
村越はそう言って宮野を揺すった。だが、宮野は一向に目を覚まさない。
村越ははっ、として、恐る恐る宮野の左手首を掴んだ。
「……死ん…でる……」
村越はぼとり、と宮野の腕を取り落とし、呆然と宮野を見つめた。
「ぅ、げほっ、がはっ」
「!!」
その時、不意に後ろで咳き込む音が聞こえた村越は勢い良く振り返った。
爆発の中、なんとか生き残ったらしい何人かの兵士が立ち上がっていた。その内の1人が、村越に気が付くと駆け寄ってきた。
「村越様、早に本陣をお離れください!この陣は落ちもうした!」
「!!ど…どうして…?!何が…ッ?!」
「恐らく、金吾殿の裏切りかと…!」
「…!」
村越はその言葉を聞き目を見開くと、血がにじむほど強く拳を握り締めた。
「小早川…よくも…!」
「!村越様はお逃げください!!」
「ッどこへ!」
「…ッそれは…されど、このままここにいられては危険にござる!!三成様の為にも!貴殿は生きてくだされ!!」
「!!……三成さん…。…私小早川の所に行ってきます!」
「!!危険にござる!」
「ここは戦場です!どこへ逃げるにしても、小早川の陣の傍は通らなければならない!なら、一矢報います!三成さんの為にも!」
「…ッ…。それならば我らを共に!」
「…分かりました。行きましょう!」
村越はそう言うと腰に下げていた刀を抜いた。そして、宮野を振り返る。
「黎凪…黎凪の夢は、必ず叶えるよ。…ごめんね…っ」
そう言って踵を返し、村越は地面を蹴った。
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