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もうお前を離さない355

「…………貴様はつくづく甘い男よ」
「んだとぉ?!」
「我に生み出せる物などないわ」
「…っ」
思わぬ返答に長曾我部はう、と詰まった。毛利はじとり、と長曾我部を見据える。
「…貴様のその甘さが我は鬱陶しいのよ」
「鬱陶…どこまでも寂しい野郎だな」
「黙れ。我は貴様とは背負うておるものが違うのよ」
毛利の言葉に長曾我部は目を細めた。きゅ、と拳を握り、わしゃわしゃと頭をかき回す。
「…背負ってるもの…確かにあんたと俺じゃあ違うだろうなァ。…………ぃよし!」
長曾我部は何かを思いついたように、ぱん!と手を叩くと毛利を見てにやりと笑った。
「あんたがそんなに俺の存在が気に食わねぇってんなら、あんたの背負ってるもんを俺にも分けやがれ!」
「はぁ?」
毛利の表情が今までになく露骨に歪んだ。
毛利はしばしぽかんと長曾我部を見た後、ふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「貴様なぞに誰が渡すか。貴様に渡すくらいならば貴様の鳥に渡すわ」
「んなっ!!」
「そもそも、背負ってどうするというのだ?貴様、最後まで守れると我に誓えるのか」
「…!」
「我は人を信じぬ。人は信じるに値せぬ。我は我しか信じぬ。故に1人で背負うと決めたのよ」
毛利は長曾我部を真っ直ぐと見据えてそう言った。
恐らく毛利の本心なのだろう。
周りの毛利軍の兵達は弓矢を収め、膝をついて毛利の言葉を聞いている。
「馴れ合いなど、所詮は一時の気の迷い――人はいつかは裏切る。友を信じなかった貴様が、我を裏切らぬと何故言い切れる?我は貴様を信用せぬ」
「……あんた…」
「答えよ長曾我部元親」
毛利の凛とした言葉に長曾我部は一度目を伏せた。
「………あんたの言葉は最もだ。だがあんたが仲間になるなら、大丈夫だ」
「何故よ?」
「俺が気に食わないのはあんただけだからな。あんたが仲間になるなら、俺ぁ裏切らねぇよ。…西海の鬼の名にかけて、誓ってみせる」
「……ふん。くだらぬ」
毛利は目を見開いて驚いたように長曾我部を見つめた後、ふい、と目を逸らした。
長曾我部はからからと笑うと再び毛利に手を差し伸べた。
「…で、どうすんだ?1人で背負って日の本を敵にするか、背負ってるもんを俺に分けて仲良しこよしに入るか…選びな!」
長曾我部の言葉に毛利は視線を動かし、宮野を見た。
宮野は毛利の視線を受け、逸らさずにじっ、と目を見つめた。
「………………」
「………………」
その場に沈黙が流れる。
「……………貴様に分けはせぬ」
「!こ、このやろ…ッ!」
「だが。…よいだろう。貴様等の仲良しごっこに入ってやろう」
長曾我部はがく、と頭をたれたが、続いた毛利の言葉に驚いて毛利を見上げた。
宮野はほっ、と笑うと静かに頭を下げた。
「…ありがとうございます」
その言葉を合図に、徳川は踵を返し関ヶ原の戦場を振り返った。

「これにて戦は終わりだ!」

徳川の言葉に、関ヶ原にいる全ての陣から閧の声が上がった。
「…秀吉様…半兵衛様…今ここに起たんとする不遜に、何とぞご許可を…。お二人のご教示は、生涯、この胸に…!」
「三成さん…」
「…後悔などしていない。………私は、生きる」
「……、はい」
村越はそう言い切った石田を静かに抱き締めた。
「うおぉぉぉぉぉぉ!成し遂げましたぞお館様ぁぁぁぁぁぁ!黎凪、?!」
歓喜の声が響く中一際大きい声でそう叫んだ真田は、宮野の表情が思ったよりも暗いのを見て驚いた。
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