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もうお前を離さない340

「……………分かった。成し遂げてみせよう!!」
徳川はそう力強く言い切った。石田はそれを聞くと目を伏せた。
「…これでいい……これでいいんだ」
「!三成さん…」
そしてぼそり、と小さい声で呟いた。村越ははっ、と石田を見上げ、そしてきゅ、と石田の陣羽織の襟を掴んだ。
それに気が付いた石田は村越を見下ろした。村越は石田の手を取ると両手でそれを握った。
「…大丈夫です」
「……!!」
石田は驚いて村越を見、小さく笑うと握られた手を握り返した。
「…三成。その代わり、1つ頼みがある」
その様子をじっ、と見つめていた徳川は不意にそう言った。
「頼み……だと?」
石田は不可解そうに徳川を見た。徳川はにっ、と勝ち気な笑みを浮かべるとがしり、と村越が掴んだ方ではない石田の手を取った。
「…お前は身を退くつもりなんだろう。だがワシは、お前も一緒にいてほしい」
「…何?」
「ワシは泰平の世を創りたい。日の本の民の笑顔を守りたい。……誰の手をも、血で汚させたくない。それはお前も同じなんだ!」
「…何だと…?」
「…ワシは、お前にも、幸せになってほしい」
「…!貴様、」
「だから!…ワシはお前に謝りたい。秀吉公を殺した事は謝れない。…だが、裏切るやり方を選んだ事は、謝る。……すまなかった」
「…!」
石田は驚愕に目を見開き、徳川を見た。徳川はじっと石田を見つめている。
「…お願いだ。新しき世を、お前も共に創ってくれ」
「………………」
「………ダメか」
石田は一度、目を閉じた。目蓋の裏に浮かぶのは、敬愛した主人の姿。
――お前はそのままでいい
かつて言われた言葉が脳裏をよぎる。
―秀吉様は、今の私をどう思われるだろうか――――

「三成さん」

「ッ、」
石田は己を呼ぶ声に目を開いた。村越が石田を真っ直ぐ見つめていた。
「大丈夫です」
そしてまた、あの言葉を繰り返した。
―貴様に秀吉様のお気持ちが分かると言うのか
そう目で訴えても、村越の視線は揺るがなかった。不愉快に目を細めると、村越は笑った。大丈夫だ、そう言うように。
「…………いいだろう」
「!三成、」
―貴様となら――例え秀吉様に許しをいただけずとも、後悔はしない
「貴様が間違った道に進んだ時は殺してやる」
ぱぁ、と徳川の表情が明るくなり、嬉しそうに笑った。
石田はその笑顔に目を細めた。
「…貴様のそんな表情は初めて見た」
「?そ…そうか?」
「…って事は、これにて一件落着ってワケか?」
「!独眼竜、」
どうやら決着がついたらしい、と判断した伊達は肩を竦めそう言った。
石田は僅かに不愉快そうに伊達を睨み、徳川は困ったように笑った。
「すまんな、独眼竜。でも、ありがとう」
「…俺は何もしちゃいねぇ。一番礼を言うべきは奴だろ」
「!…あぁ…そうなんだがな……」
伊達の言葉に徳川は僅かに表情を暗くした。それが誰の事かは言われずとも分かった。
「…黎凪の夢は叶った、向こうで喜んでいるでござろう…」
「!真田…」
「…戦いは終わったのでござろう。この戦も、終わらせましょうぞ」
そう言う真田の声に、普段の力はなかった。顔は笑ってはいるが、どこかぎこちない。
伊達と徳川は顔を見合わせ、石田は目を伏せ、村越は俯いた。

だが、その時

「政宗様!」
「あぁん?どうした小十…えっ?」
「どうしたんだ独眼竜…ぅえっ?!」
「何貴様等不抜けた声…を…」
「なぁぁっ?!」
小早川陣に駆け込んできた片倉が指差した先で―――宮野が走っていた。
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