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もうお前を離さない338

「…貴様、」
「自分勝手なのは重々承知しています…でも私はもう…これ以上奪いたくないんです…ッ!!私はやっぱり、あの時に死ぬべきだった、」
「村越!」

「お父さんが黎凪の家族を殺したと分かったあの時に、死ぬべきだった!」

「なぁぁっ?!」
「What?!」
「何ぃぃっ?!」
「喧しいぞ貴様等ぁぁッ!」
再び三者三様の声を上げた三人に石田は怒鳴った。
石田の一喝に三人はピタリと黙り、石田は視線を村越に戻した。
「貴様、本気でそう思っているのか!」
「だってそうじゃないですか!!お父さんが殺人なんかしたのは、私の学費が無かったから!!私の存在は奪ってばかり…!」
「偶然が重なっただけだ!貴様が奪った回数など、黒田が不運に見舞われた回数の一厘にも及ばない!」
「…そ、その例えはどうなんだ?」
「黙れ家康!」
徳川はぎろりと自分を睨んだ石田に苦笑しながら真田を見た。
真田ははっ、と我に返ったように2人に近寄った。
「村越殿…それは……」
「本当の事です。…うちの家族が殺しあったのはそれが原因ですから」
「…ッ!!?!…しかし……」
「アイツはどうでもいいって言ってたぜ。アンタが自責の念に駆られるのは分からねぇでもねぇが、無意味な事だぜ」
「そういえば言っていたな」
「むぅ…更に格下げされているでござる」
「あぁん?そうなのか」
「最初は驚いておりもうしたゆえ」
村越は2人の言葉を聞いても顔を歪めただけだった。
「…たとえ黎凪が平気でも奪った事に変わりはない、それに!私は…三成さんからだけは奪いたくなかった…ッ!!これ以上奪いたくないんです…!」
「…ッ」
石田は村越の言葉に思わず息を呑んだが、すぐに苛立ちに表情を歪め、離していた体を再び抱き締めた。
「!三成さん人の話を「ふざけるな!」な…ッ」
「…これ以上私から奪いたくないならば貴様がいなくなるなッ!!」
「…!」
「逝くことは許さない!私の元から去るな…ッ…ずっと傍にいろ…!」
「みつなり、さん…」
村越は驚きに目を見開いていたが、次第にその瞳は潤み、涙を溜めた村越は静かに目を閉じ石田の胸に顔を押しつけ抱きついた。
「HA!!大した口説き文句だな」
「!貴様…ッ!」
「はははっ、真っ赤だぞ三成!」
「…まぁ気持ちは分かりまするがお止めくだされお二方」
「どういう意味だ真田!!」
揶揄られた石田は顔を赤くしてふいとそっぽを向いた。村越は顔を起こし、真田を見て、俯いた。
「…すいません幸村さん。黎凪…守れなくて…!」
「…いえ、貴殿が無事で何よりにござる。黎凪の事は…覚悟はして、おりもうしたゆえ」
「…ッ」
「それより村越殿…右腕は大丈夫なのでござるかっ?」
村越は真田の問いに右腕を見下ろした。そして僅かに苦笑する。
「…これは…何が何でもこれ以上犠牲を出したくなかったから、大筒の中に火種投げ入れたらこうなりました」
「何やってんだアンタ!!」
「…っははははは!君はどうにも…大胆だなぁ!」
思わず伊達は突っ込み、徳川は村越の思い切った行動に吹き出した。
石田は不愉快そうに徳川を睨んだ後、村越を抱く手を離し、僅かに俯いた。
その意図を察した真田は薄く笑った。
「……当初の決意を通しまするか、三成殿」
「え?」
「…そうだな…。家康!」
「な、なんだっ?」
石田は一度目を閉じた後、きっ、と徳川を見据えた。
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