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もうお前を離さない349

「これくらいしないと、貴方は話を聞いてくれない気がしたので」
「…………………」
「い、いつの間に…」
「かすがさんが殴り込みに来て。その時に」
「なっ、なんと」
「…ちっ」
「…聞いていただけるようですね。すいません」
小さく舌打ちをして輪刀を僅かに下げた毛利に宮野はそう言った。
「おい。なんでアンタ、謝ってんだ」
「本当はこんな事したくないんですよ…周りが皆敵って、しんどいじゃないですか」
「…。話とは何ぞ」
「早い話、降参してくれませんか?」
早い話と言った通り、宮野はずばりと直球にそう言った。ぴくり、と毛利の眉が跳ねる。
「…何を申すかと思えば…降伏せよだと?」
「降伏…って言い方は好みませんけど…」
「…黎凪ってそんな博愛主義だったっけ?」
「はぇ?ないないない!そんな事はない!」
「毛利をこっちに引きずり込むって言ってたよね。…黎凪は、その…なんで?」
問い掛けた内容が曖昧な村越であったが、宮野は村越の表情からなんとなく何を言いたいのかは察する事ができた。
「…私も昔は毛利嫌いだったけどさ。最近は、この世界で一番まともな人だと思ってるよ」
「えぇぇ?まとも…?」
「兵を捨て駒扱いする野郎がまともだぁ?!」

「大切にするから、失うのが恐くなる。失うと辛くなる。…大切にしなければ辛くない」

「…ッてどこぞの爆弾魔みてぇな事言うんじゃねぇよ!」
そう言う長曾我部に宮野は苦笑する。毛利は黙ったまま、反応しない。
「…犠牲が出ない戦いなんてない。何を為すにも必ず犠牲が出る。それが、ただ自国を守るための戦であっても」
「…確かにそうだ。戦は必ず悲しみを生む」
「毛利殿。貴方は家を背負って生きてる。多分この場にいる誰よりもその重みは重い。貴方は家の為、負ける訳にはいかない、違いますか」
「ならば何だと言うのだ?」
「確かに、一番手っ取り早く戦を終わらせるには敵を全て殺せばいい。その為に貴方は策略を巡らせ、最も効率的な方法で敵を殲滅しようとしている」
「だがその為に毛利は自軍の犠牲を厭わねぇじゃねぇか!」
「違う。そんな事はない」
「何故言い切れる。兵など所詮捨て駒よ」
「なら貴方は何に耐えている?」
宮野のその言葉にぴくり、と毛利の表情が動いた。
「…何の話ぞ」
「貴方はずっと耐えている。何かまでは断定出来ませんけどね」
「耐えておるだと?我は何にも「兵を捨て駒として扱うのは兵を失う痛みを少なくするためだ」
毛利の言葉を遮って宮野が言った言葉に、毛利は不愉快そうに宮野を睨んだ。
宮野は怯まず、その目を見返す。
「もし仮に長曾我部が言うように自軍の犠牲を厭わないのならば全員爆弾兵にでもして特攻させればいい。武器も弓矢じゃなくて刀にして相手の懐に突き込んでいけばいい。…そうしないのは自軍の犠牲を少しでも減らすためだ。国を守り切った後、そこに住む者がいなかったら意味がない」
「………!」
「我が捨て駒共を想っておるとでもいいたいのか?」
「少なくとも、今貴方が戦うのは毛利の家の為、領国安芸の為、そしてそこに住む人の為でしょう?」
宮野の言葉に毛利はふん、と鼻をならした。
「我には興味のない事よ」
「ならば何故、貴方は自軍の犠牲が少なくなる戦い方をする。それは最も効率的な策とはいえない」
「…………………」
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