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もうお前を離さない346

「………来るか…」
「…?何が?」
ぼそりと呟いた宮野に村越は眉間を寄せた。
その時、坂道の上に特徴的な兜姿が現れた。
「捨て駒共が、仲良しこよしを始めたか。…愚かな事よ」
毛利だ。
宮野は真っ直ぐ毛利を見上げた。
「れ、黎凪…」
「むぅぅ…ッこちらは疲弊しきっておる…漁夫の利を狙って来たか、毛利ぃぃっ」
「石田の判断は正しかったな。…毛利は弓兵が多い上に数が多い。陣に戻った方が安全だ」
「ワシらの方が不利だな」
追い付いた徳川がそう言った。その後ろに、石田が続く。
「鬼島津と立花殿も後から来ると言っていたぞ。あ、だが…」
「真田。所々にいた珍妙な奴らはなんだ?」
「珍妙?…あ、もしや、尼子晴久殿、宇都宮広綱殿、佐竹義宣殿にござるか?」
「佐竹だ?なんで野郎が来ていやがる」
「宇都宮殿と共に某を手伝いに来てくださったのでござる。それより黎凪、如何するのだ。条件とはなんなのだ?」
真田の言葉に、漸く宮野は真田を振り返った。
「今、この関ヶ原にいるのは、石田、徳川、伊達、真田、大谷、大友、島津、尼子、佐竹、宇都宮、毛利などなど…。日本全国の主要な武将が揃い踏みだ」
「……確かに…多くの武士達が、この地に集結しているな」
「……それが何だってんだ?話が見えねぇんだ、がッ」
伊達は一斉に飛んできた矢を払うべく技を放った。真田も手の内で槍を回して矢を弾いている。
「早くなんとかしないとワシらがやられるな…気は進まんが、強行突破するぞ!」
徳川は拳を振り上げ、その体制のまま力を溜めた。振り上げた拳が僅かに光る。
「―――行くぞ!」
徳川の言葉に徳川の前を守っていた伊達は脇に飛び退いた。
―――天道突き!!
「はぁぁぁぁぁっっ!」
徳川はためていた拳を勢い良く前に突き出した。
拳圧で敵兵が乱れ飛ぶ。
「!家康、油断するなッ!!」
「!三成ッ!!」
その後ろに迫る敵兵に気が付いた石田は刀を振り抜いた。徳川の背中を守るように石田は徳川と背中合わせに立った。
だが、その周囲をずらりと敵兵が囲んだ。2人が孤立する。
「!三成さん!」
「Shit!!どっから湧いてくるんだこの数は!」
「わ、芽夷危ない危ない!」
2人の耳にそんな声は聞こえるが姿は見えない。繰り出される刀を防いでは攻撃を繰り返す。
だがその時、どこからか放たれた銃弾が石田の足を貫いた。
「ぐ…っ!!」
「!!三成!」
思わず膝をついた石田に、チャンスとばかりに敵兵が迫った。
「…この数では…ッ」
徳川はぐっ、と拳を作ると目の前の兵を地面に拳を叩きつける事で吹き飛ばし、振り返ると石田の頭を抱き抱えた。
「!家康…ッ、」
「―――ッ」
来るであろう痛みに、徳川が目をつぶった時だ。

「鳴け!誇り高き八咫烏よ!!」
「掴めや抱け!乱れ髪!!」

その場にそんな声が響き渡り、爆風が巻き起こった。
「孫市…ッ」
「慶次か?!」
「大丈夫かい!お二人さん!」
「…何をしているのだお前達」
ばっ、と勢い良く徳川は顔を上げた。視線の先には、前田と雑賀の姿が。
雑賀は石田の頭を抱き締める徳川に呆れたような視線を向け、徳川は慌てて石田から離れた。
「…孫市……」
「二度と前に現れるなと言われたが、危機とあってはそういう訳にも行かないだろう?兵も連れずに何をしている?」
「毛利と話をしに行くんだ」
「話…だと?」
雑賀は不可解そうに徳川を見た。
その時、不意に前田が空を仰いだ。耳の隣に手を添える。
「…なぁ孫市、なんか聞こえないかい?」
「何?…!」
「地響きっていうか…」
前田の言葉の通りに、その場に小さな揺れと共に地響きが聞こえてきた。
「!来たか!!」
「え?!な、な、何が?!」
突然宮野はそう言い、地響きが迫る方向へ視線を向けた。
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