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もうお前を離さない343

「黎凪!」
真田は慌てて宮野に駆け寄った。血がこぼれているのは、右目からだった。
「い…ぁ……右目が…ッ」
「…ッ!!貴様何をした!」
『ちっ…悪運のいい。右目の視神経だけしか切れなかったとはね』
「しし…?くそっ」

「もう止めてぇぇっ!!」

村越が、悲痛な叫びをあげた。宮野ははっ、と村越の方を見た。
村越は頭を抱え、ぶるぶると震えていた。
『…芽夷ちゃん…?!』
その時漸く村越に気が付いたらしい、火の玉の動きが止まった。
「消え失せろぉぉぉッ!!」
その一瞬を逃さず、石田は持ち前の速さで一気に火の玉に迫り、一刀のもとに切り捨てた。
『お…のれ……殺し…て…や…………』
火の玉はそう言い残し、消え去った。
「芽夷…!」
宮野はぐいと右目を拭い、慌てて村越に駆け寄った。
「Goodだ石田」
「見事にござる」
「何がだ!」
伊達と真田はぽんと石田の肩を叩いたが、石田は気にすることなく村越を振り返った。
「芽夷、ごめんな。嫌なもん見せて…「どうして…?どうして平気なの?!」
村越はすまなそうにそう言った宮野に掴み掛かった。
「め、芽夷…」

「今の火の玉の声、お母さんでしょ?!」

「なぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ?!」
「喧しいぞ貴様等ぁぁっ!!」
同時に声を上げた徳川と真田を一喝し、石田は村越の隣に立った。真田も慌てて宮野に近寄る。
「どうして…お母さんなのに……なんで…ッ!」
「―――――……。あの人は、そういう人なの」
「!」
「私が全部悪いの、あの人にとっては。他の人は皆巻き込まれ。……大丈夫だよ、もう割り切ってたから」
「そんな…ッ」
ぼろぼろと泣く村越に宮野は笑う。
「三途の川で会っちゃってさ。それからずっとあんな調子。ほんと参っちゃうよ」
「…ッ」
「…なぁ、宮野殿。お市殿は、何故…死んだんだ?話から察するに、三途の川で会ったのだろう?」
「…死んだっていうか…お兄さんと一緒に眠る、そう言ってました」
「お兄さん…信長公と?!」
驚く徳川の声を聞きながら、宮野は僅かに視線を空へと逸らした。
「…信長が復活するルートだって事は知ってました。…でもその事を言うことは出来なかった。…リミッターかかってるんで」
「り、りみったぁ…?」
「言葉に制限がかかってんのか?」
「私はあくまで干渉者ですからね…必要以上の事を語ってはいけないんですよ。少なくとも、私が今回、ここに来たのはこの戦を止めるためですから、どちらかが有利になるような情報は言えない」
「…そうだったのか」
「…まぁ。お市さんは自分が生きる目的を見いだせた。…会って話した時、どこか幸せそうでした」
「………そうか。…なら、よかった」
徳川はそう言うとほっとしたように笑い、目を伏せた。宮野は徳川から村越へ視線を戻した。
「…泣くなよ。あの人、外の面はいい人だけど素はあんな人だから」
「…黎凪…なんで平気なの…?」
「言ったろ?割り切ってたって。…あの人の事で泣ける涙はもう尽きちゃったんだよ」
「…!」
「それに、あの人自分が殺された事に関しても私しか恨んでなかったから、これで完璧に芽夷の事許せるだろ?」
「…そんなこと!」
「…何度も言ってるけど、私は三成さんじゃない。私にとってあの人は大切な人でもなんでもない。たとえ親子でも、愛してない。…あんな人のために、どうして友達失わなきゃならないんだよ?そんなのやだよ」
「黎凪……」
「「………」」
宮野の言葉に、石田と徳川の視線がぶつかった。2人はしばらくそのまま見つめあい、徳川が先に目を逸らし、伏せた。
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