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もうお前を離さない353

「……ッ………」
「毛利殿」
「、」
宮野は毛利に向かって手を差し伸べた。毛利はきっ、と宮野を睨む。
「いい加減にせよ。何といわれようと我は揺るがぬ!」
「…矜恃を大切にするのもいいですが、貴方らしくないですね。今のは貴方の感情に国を巻き込んでいるだけですよ」
「好きに言えばいい。我を理解出来るものは我1人でよい!」
「そうやって我をはってがむしゃらに走ったって貴方には何も残りませんよ!…貴方がいつまでもそう我を張るならば、私も貴方のことを忘れてやりますよ」
「貴様…どこまで我を愚弄すれば気が済む!」
「愚弄しているつもりはありませんが、今の行為は貴方が首を縦に振るまで止めません!」
「ふん。先と言っている事が矛盾しておるぞ。貴様の考えの中には決裂も含まれておるのだろう?」
「………。なら頭のいい貴方に聞きますが、何故私がここまで意地を張ってるか分かりますか」
宮野はきゅ、と拳を作るとどこか哀しげに毛利を見つめた。
毛利はじっ、と宮野を見つめた後、ふっ、と嘲笑うように笑った。
「……………ふん。己の為か」
「なっ…「えぇ正解です」えぇぇ?!」
宮野の言葉に真田や村越は驚愕し叫びながら宮野を見た。
宮野は自嘲気味な笑みを浮かべて毛利の前でしゃがんだ。
「…貴方みたいな人放っておけないんですよ。自分勝手なのは分かっていますが、昔の自分を見ているみたいで」
「昔の貴様なんぞを我と並べるな」
「…毛利殿」
「諦めよ。我は屈せぬ」
「諦めません。今諦めたら、私は今まで私が進んできた道が間違っていたと認める事になる」
ぴくり、と毛利の表情が動いた。
先ほど激昂していた所から、己の道を否定されるのは余程許せないのだろう。
だからか、宮野の話に興味を持ったらしい、静かに先を動かした。
「この中の一部の人は知っていますが、私とそこにいる子はこの世界の人間じゃありません。あの子がどうやって来たのかはよく知りませんが、私は自分の意志でここに来ました」
「…方法は聞いても知らなそうだな」
「えぇ細かい原理は知りません。とにもかくにも、私はここに来ました。…この戦を平和的に終わらせるために」
「物好きな事よ」
「そう言われたのは初めてですね」
宮野は毛利の言葉にくすりと笑い、目を伏せた。右目から流れていた血を拭い、それを見下ろす。
「…犠牲の無い戦はない。それでも私は、誰も後悔しない戦いにしたかった。そのために私は色んな人達の生き方に口出ししてきました。…その結果が今です」
「ならばよいであろう。我が死のうとも、結果は良よ」
「…今の状況に、良をくれなかった人がいるんですよ。まぁ多分、この先ずっと、良をくれないでしょうけど」
「他者1人の意見で惑わされるような弱い信念か」
「母親なんです」
宮野はそう言うと伏せていた目をあげた。毛利は眉間を寄せ、どこか考え込んでいるようであった。
「…解せぬ。如何にして母に会うというのだ」
「…一回死んだんですよ、私。その時、三途の川越しに会ったんです」
「三途の川とはまことに存在するものであったか」
「その時こう言われました。中途半端だ、と」
「中途半端…」
毛利の目がすぅ、と細められる。
「お前がした事は全く平和的解決ではない。お前が止めたのはお前の目の前で起こった事だけ。お前は目先の事しか解決していない。現に、たくさんの人間が戦で死んでいるだろう?と」
宮野はそう言って苦笑した。
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