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もうお前を離さない339

「…家康。私は貴様を許しはしない」
「…あぁ」
「………だが…。…、私は貴様の罪を、許す」
「…えっ?」
「聞こえなかったのか。貴様の罪を許すと言っている!貴様が裏切った事は許せはしない、だが!…この戦で貴様を殺した先には何もない。紛れもない虚無だ。…そんなものを得たいのではない。ならば私は、貴様を許してでも、秀吉様が目指されたものを目指す!」
「……三成………」
徳川はやや呆然として石田を見た。石田は不愉快そうに徳川を睨んだ。
「なんだその腑抜けた顔はッ!!」
「すっ、すまんっ!え、だ、だけど…何でだっ?!」
「まぁ、最もな疑問だな。さっきぼろっと漏らしたときも驚いたがよ」
「?!」
「気付いてなかったのかアンタ!」
「…ッそんな事はどうでもいいッ!理由だと?そんなものは…今吐き出したのが理由だッ!!」
「…三成……お前…」
徳川は石田を見つめ、ふ、と目を伏せた。
「…はは……参ったな……」
「何だと?!」
「怒らないでくれ。…嬉しくて涙が出てきたんだ」
「ッ!!」
徳川はぐいと目元を拭った。
「…お前に許された事じゃない。お前が、お前の意志で進むことを選んだ事がだ」
「…………貴様は私の保護者か」
「はは…ッ」
徳川は嬉しいと言ったとおりに嬉しそうに笑った。
石田はふん、と鼻を鳴らす。
「…拒否は認めないぞ」
「三成。お前…いいのか。その…ワシに言えた立場じゃないが」
「…私とて未だに迷っている。村越が死んでいたらこんな事にはなっていなかったぞ」
「…奴と言っていたのは村越殿だったんだな。三成は村越殿とはどういう関係なんだ?」
「!!そんな事は今はどうでもいいだろう!貴様!さっさと返答しろ!」
石田の言葉に、徳川は僅かに表情を暗くした。
「――――………。三成、お前は、秀吉公の目指されたものを目指すと言ったな。…ワシは、この国に泰平の世をもたらしたい。天下の平和、それがワシの夢だ。秀吉公は泰平よりも、世界を相手取ろうとしていた。お前もそうなのか?」
「………………………」
「もし、秀吉公の意志を継ぎ、世界に進出しようと考えているなら、ワシはお前の許しを受け入れる事は出来ない。ワシはその想いを砕く。人でなしと言われようと、それが、秀吉公を裏切ったワシの罪だ」
徳川はぐ、と拳を作ると真っ直ぐ石田を見据えた。石田はその視線を受け、目を細めた。
「…私は世界にも天下にも興味がない」
「!」
「私は秀吉様が目指された強い日の本を作る、ただそれだけだ。…ただ、強さは武力のみではない、そう…最近気が付いた」
「……三成……………」
「私は世界に進出するつもりはない。…もう奪われるのはごめんだ」
「…………」
石田は言葉を区切ると徳川を見据えた。徳川もその目を見返す。
「…私は、秀吉様が築いたこの国を、守りたい」
「…!」
「貴様が願うなら泰平の世を築いてみるがいい。貴様が秀吉様を裏切ってまでしなければ築けないようなものでなかったら、その時は斬滅してやる」
「…つまり、ワシが創るものが秀吉公には創れないものだと、証明すればいいということか?」
「…そうでないならば、貴様は何故秀吉様を殺したのだ」
「………………」
「貴様は秀吉様には出来ないと判断したから秀吉様を裏切ったのだろう。…秀吉様は確かに泰平の世を願っていた、…貴様とは違うやり方でな。…貴様のやり方が正しいと私に見せてみろ。私が完全に貴様を許すのはその時だ」
石田はそう言うと徳川の答えを待った。
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