2011-12-22 23:53
「黎凪……?」
「……………」
宮野は真田に気が付かないまま、しばらく目を伏せた後にふいと真田に背を向けた。
「あ、黎凪…」
「おい。毛利はこれでいいとして、こいつはどうする」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ん?あぁ金吾か。すっかり忘れていた!」
「…本音が漏れてるぞ家康……」
石田達の声に宮野はそちらに向かってしまい、真田は声をかけるタイミングを見失ってしまった。
「……うーん…どうしようか?咎めなし、…は、お前が納得出来ないな」
「当たり前だ!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ」
徳川が石田をちらり、と見て言った言葉に小早川は震え上がった。
その輪に混じった宮野は、ふむ、と顎に手を添え呟いた。
「…どうせこの後宴会になりますよね?」
「うん?」
「…なるだろうな」
石田の言葉に宮野はぽん、と手を叩いた。
「じゃあ小早川殿はその準備係って事で。鍋でいいんで全員分作って、宴会終わったら片付けしてください」
「えっ?……う、うん…?」
「…面倒な仕事を任せるという事か?」
「皆疲れてるから、自分の分はともかく他人の分の用意なんてしたくないでしょう?」
宮野はにっ、と笑ってそう言った。
「じゃ、鍋任せます。あ、でも具材はちゃんと切ってくださいよ!」
「…そんな事より宮野殿達は手当て!傷の手当てをしないと!!」
「え?あーそうですね」
「あ、私は三成さんがしてくれたので大丈夫です…」
「あれ!?いつの間にしたんだ?!」
「火傷を放置しておけるか」
「あははは!本当にまぁ、いい夫婦だねぇ」
「「!!」」
宮野の言葉に、かぁぁ、と2人の顔が赤くなった。お、と徳川の目が楽しげに光る。
「お?三成、顔が蛸みたいだぞ」
「黙れ家康っ!!」
「そういえば刀の鍔、1つしかないと思ってたら片方は彼女に渡していたんだな。三成お前…!」
「いぃえぇやぁすぅぅぅぅっ!!そんな目で私を見るなぁぁぁッ!!」
顔の赤さが更に増した石田は、刀を鞘に収めたまま振り回し、逃げた徳川を追い掛けた。
「あはははは」
「黎凪…大丈夫?」
「ん?大丈夫だよ」
からからと笑う宮野に村越はそう尋ねたが、宮野はさらりとそう返した。
村越は僅かに目を伏せると、宮野をぎゅう、と抱き締めた。
「…ありがとう。そしてごめん」
「なんで謝るのさ」
「…ううん、いいの。じゃあ、私2人止めに行くね」
「頼むねー」
村越と別れた宮野は、くるりと踵を返して今度は毛利達の方へ走っていった。
真田はぐ、と拳を握り、ただそんな宮野を見つめた。
「あーもー!早速喧嘩しないで下さいね?!毛利殿も、宴会には来てもらいますよ!」
「ちっ」
「舌打ちしないでくださいね?長曾我部殿はこの富嶽燦式なんとかしてください」
「なんで名前知ってんだアンタ!」
「いいから早く!次、黒田殿ー?!」
「なんじゃあ!人を大声で呼びなさんな!」
「…えーと。枷は後でなんとかするので黒田殿はそのまま待機でお願いします」
「何故じゃぁぁぁぁっ?」
「さて、次は、と」
宮野はふぅ、と息を付くと、真田の視線に気が付き真田を見た。
「?どうしたの幸村」
「…指示は後にせよ。先に手当てをするぞ」
「え?いや、平気」
「いいから来い!」
真田は思わずかっとしてそう怒鳴ると、ぽかんとしている宮野の腕を掴み、武田軍の陣営へと歩きだした。