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もうお前を離さない351

「…芽夷…」
「くだらぬ」
村越の言葉を毛利はそう一蹴した。
「我を貴様等のような子供と同じにするでないわ。元より愛など必要ないものよ。寧ろ、そんな感情を抱える方が愚かよ」
「…ッ」
「同じにした腹積りはないんですがね…。でも私は大体当たってる気がしましたけど」
「貴様なぞに何が分かる」
「まぁ…確かに、真髄の所は貴方にしか分からないとは思います。私は貴方を見て考えて、仮定した結果を話しているだけですから」
「分かっておるなら左様な事を戯れるな」
「…じゃあ教えてもらえません?真髄のトコを」
「なん…だと?」
ぴくり、と毛利の表情が引きつった。宮野はぱ、と両手を上に上げ、降参とでも言うかのように肩を竦めた。
「…もし私と芽夷の仮定が大幅に外れているのなら、分からないんですよ」
「貴様等が理解する必要がどこにある」
「今の状況には関係ありますよ。聡い貴方にはもしかしたら打開策が見いだせてるかもしれません…が、この交渉が決裂するならば、…容赦はしません」
「!」
宮野の言葉に真田ははっとしたように宮野を見、そして静かに槍を構えた。
「…」
毛利は不愉快そうに宮野を睨んだ後、口を噤んだ。
「…もし貴方が何も想っていないのなら、貴方の所の兵士は何故貴方についていく?」
「…、」
「人は意外と繊細だ。…自分を嫌うような感情には尚更。自分を本当に捨て駒と見ているような人間に己からついていくのは、余程のマゾヒスト、被虐嗜好者くらいだろうよ。…人間は何だかんだ言って自分が一番可愛くて正義だからな」
最後はどこか吐き捨てるように宮野はそう言い、目を一瞬伏せた。
すぐに目を上げ、再び口を開く。
「…だけど、日の本が敵に回った今、貴方の兵士は誰一人助けを乞わない。命乞いをしない。貴方を見捨てようとしない」
「!そういえば…確かに、誰一人…恐れていなければ…逃げようとしない」
「…我が捨て駒ならば当然の事よ」
「自分を愛していない人間の為にすべてを捧げる人間は普通いない。ましてこれだけの数の人間なら尚更な。…それでもついていくのは、それは、貴方の苦しみや痛みを、そして貴方の想いを理解してるからだ」
「有り得ぬわ。無いものを理解できる者などおらん。我も奴らと同じ、等しく捨て駒よ。それを理解しているまで」
「なら、確かめてみましょうか。貴方が同じ捨て駒ならば、捨て置くでしょうから」
「何、」
宮野はそう言うとにやりと笑って兜割りを抜きとった。毛利はぴくり、と眉間を寄せる。
宮野は笑ったまま地面を蹴った。
「愚かな」
毛利は一直線に駈けてくる宮野目がけて輪刀を振り下ろした。
が、その時。
―――ガキィィ!
そんな鈍い音を立て、輪刀が毛利の手から離れ弾き飛んだ。
「何ッ」
兜割りは、十手のような形をしている武器だ。宮野はその隙間で輪刀を受け、兜割りを回転させる事で輪刀を回し、そのまま振り上げ飛ばしたのだ。
「ぃいやぁっ!」
宮野は兜割りを逆手に持つと、勢い良く毛利の鳩尾目がけ突き出した。
「ッ、ぐ!」
みしり、と音が鳴り兜割りがクリーンヒットする。毛利は跳躍して距離を取ると落ちてきた輪刀を掴み、構えなおした。
「相手の武器を奪うのは得意技なもんで」
「ふん。ぬかったわ」
「まだまだ行きますよ」
「その傷だらけの体で何ができる」
「ご心配なく。今痛いのは右目だけですから」
宮野はそう言って笑うと再び地面を蹴った。
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