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聖なる夜のハプニング61

「…………三成よ」
「なんだ刑部」
「我は主に許しを乞わねばならぬ事がある」
「………なんだ」
打ち合わせ通りの場所に移動しながら、大谷は不意にそう口にした。石田は眉間を寄せたが、薄々察していたからか、静かにそう返した。
大谷はヒヒッ、と小さく笑った。
「とはいえ許しは求めておらぬ。話すつもりもなかったが……太閤が主に生きよと命ぜられた。そうとなると、黙ったままではおれぬと思うてな…許せぬならば、かの地に着いた時に我の首をくれてやろ」
「さっさと答えろ刑部。貴様を許すか許さないかはその後だ。…長曾我部の事か」
「いかにも」
大谷は、自分がしてきたことを、石田に告白した。



 同じ頃、吉継の家から少し離れた自然公園のグラウンドに、人だかりができていた。その中にいるのはフル装備で各々武器を構えた伊達、真田、長曾我部、黒田、そして審判のようにはずれに立つ徳川だ。
真田は前に立つ伊達に向かい、口を開いた。
「政宗殿、貴殿との決着、この場にてつけとうござりまする!」
「Ah?随分また急な話じゃねぇか。関ヶ原でも、」
「関ヶ原ではおそらく某は一人の"真田幸村"として、貴殿に向き合えぬと思うておるからでござりまする」
真田の言葉に、楽しそうに笑っていた伊達は僅かにその笑みを消した。真田はぎゅ、と槍を握り締め、ぶんっ、と振り下ろした。
「某今は何よりも守らねばならぬものがありまする。某は…後悔したくはないのでござる」
「…俺との勝負をおろそかにするのは後悔しねぇ、ってか?」
「否。無論後悔しまする。されどそれは某一人だけのもの…」
真田はキッ、と伊達を見据えた。
「武田全てを失うよりかは、後悔が少ないのでござりまする」
「……興が冷めること言ってくれんじゃねぇよ」
「どちらを選んでも後悔するならば、後悔が少ない方を某は捨てまする。貴殿は幻滅なされるでござろうが…今の某には、そうする他ないのでござる。それ故に、今。貴殿と決着をつけたいのでござる」
「…………」
「今なれば、某は一人だけの"真田幸村"として、貴殿の前に立てるからでござる!」
真田はそう言いながら槍を構えた。伊達は黙ったまましばらく真田を見据えていたが、不意にふっ、と笑うと六振りの刀を引き抜いた。
どよ、と周囲の野次馬からどよめきが起こる。
「OK!納得行かねぇこともなくはねぇが、今のアンタはいい目をしてる。それがテメェの覚悟なんだろ。それを俺が嫌だからって理由で断るのはアンタに対する侮辱になっちまうな…行くぜ真田幸村ァ!」
「…!望むところでござりまする、伊達政宗ェ!!」
伊達と真田はそう吠えると、二人同時に地面を蹴り、勢い良く衝突した。その勢いに衝撃波が起こり、野次馬からちらほらと悲鳴が上がった。
「…おい黒田。四国の事、」
「あぁ、やったのは小生だぞ」
長曾我部は衝撃波に僅かに眉間を寄せた後、前に立つ黒田に向き直りそう口を開いたが、言葉を遮るように黒田にそう答えられた。長曾我部は眉間を寄せる。
「言い訳するつもりはないぞ」
「…なんでだ、どうして」
「そのへんも語るつもりはないぞ」
「アンタだって大谷に、」
「利用されていた心積りはないぞ。まぁやりたくてやったわけじゃあないがな。そう単純な話じゃないんだよ」
「脅されたりしてたんじゃねぇのか」
「そんなことが、国壊滅させた言い訳になるとは思わんが?」
「………ッ」
黒田の言葉に長曾我部は悔しげに顔を歪めた。

聖なる夜のハプニング60

「…家康よ、何があった。それに隣の男は…?」
秀吉はぽんぽんと石田の背中を叩きながら、入口にいる家康に対しそう尋ねた。家康ははっ、としたように秀吉に駆け寄る。大谷もふよふよとそれに続いた。
「細かいことはこの前お話した通りです。それで、今朝家の周りに怪しい男達がいて」
「あぁ、吉継君の予想が当たってしまった、ってことかな?」
半兵衛がぽん、と手を叩いてそう尋ねると、家康は小さく頷いた。
「たぶん…現に官兵衛さんがそいつらに撃たれて」
「えっ大丈夫なの?」
「麻酔銃、とかいうの奴らしくて…」
「じゃあ大丈夫かな…っていうかこの子はともかく、君たちどっから入ってきたの」
「あ、この人の力を借りて屋上から」
「そういえばなんか浮いてるね。君は?」
「ヒヒッ、大谷吉継と申す者…竹中半兵衛殿とお見受けする」
「へぇ、僕もいるんだ」
半兵衛はじろ、と大谷を見たあと、石田に倒され床に倒れふす男たちをじとりと見下ろした。
「ところで、と。じゃあこれもそれの仲間?」
「多分…吉継さんは彼らの狙いはワシと三成じゃないかって言っていて…」
「だから君に一番関わりの深い秀吉が狙われた、と」
「…………ッ」
「君が責任を感じることではないよ、家康君」
ぐ、と拳を握り締めた家康に半兵衛はぽんぽんと頭を撫でた。むぅ、と家康は納得いかなさげに眉根を寄せたが、反論はしなかった。
石田はぐい、と目もとを拭うと、秀吉の腕の中から抜け、その場で膝をついた。
「…秀吉様、この場にして、失礼させていただきます」
「…一つよいか」
「なんなりと」
秀吉は、すぅ、と目を細めた。

「生きよ、三成」

「……ッ」
「よいな」
「………はっ!!」
秀吉の発した言葉にびくり、と石田の体が揺れたが、念を押すように続いた言葉に、遅れながらも力強く返事をした。
石田は膝をついたまま頭を下げると、すっくと立ち上がり大谷に視線を合わせた。大谷は小さく頷くと、石田が破壊した窓から外へと出た。石田はそれに続くように窓から飛び出し、大谷の輿に飛び乗った。
「ではな。あとは主に任せるぞ」
「あぁ。…そちらも気をつけて!」
「ふん。行くぞ刑部!」
「あいあい」
大谷はヒヒッ、と小さく笑うと輿を空へ向けて急上昇させ、薄暗い夕方の空の中に消えていった。
窓辺にやってきた半兵衛は、片手を目の上に当ててそれをみあげる。
「これからどこ行くの、彼ら」
「狙ってきた奴らはどうにも密かに話を進めたがっている。ここの病院にしろ、こんな奴らが入り込んでだり凶王さんが窓を割ったりしたのにまだ誰も来ない。ならば、いっそのこと」
「派手な騒ぎにしてしまえ、と?危険じゃないかな」
「勿論リスクはあると思う。でも、このまま静かにしていたら消されかねない」
「…あの子、三成君には悪いけど、三成君よりはるかに強い」
「!」
「あれだけ強かったら、案外悪くない作戦かもしれないね」
「……」
家康は二人が消えた空を見上げ、ぎゅ、と拳を握り締めた。

聖なる夜のハプニング59

「……三成、君………?」
その他の男も瞬く間になぎ倒し、その病室は3分もしないうちに石田によって制圧された。半兵衛は秀吉を庇うように立ち上がりながら、恐る恐るそう尋ねた。
半兵衛の声にはっ、と我に帰った様子の石田は半兵衛達の方を振り返り、フードを下ろしてその場で膝をついて頭を下げた。
半兵衛は石田の行動に首をかしげたが、秀吉は薄く笑った。
「…家康から話は聞いている、石田三成よ」
「…ー!」
秀吉が声を発すると、びくっ、と石田の肩が跳ねる。半兵衛は、あぁ、と小さく呟いた。
「…戦国時代から、っていうあの?」
「………」
「頭をあげてくれ。それから、近くに来い、三成」
「!は、は…ッ」
石田は戸惑ったように顔をあげた後、恐る恐る立ち上がった。半兵衛はそんな石田の反応が面白かったのか、ふふっ、と小さく笑うと石田の腕を掴んで引っ張った。
「!!!は、半兵衛様、」
「わぁ、アホな女の子以外に様なんて呼ばれたの初めてだよ。ほら座って座って」
「い、いやしかし、あの、」
「僕も座るから、ね?ふふっ、何この子可愛い。三成君以上に可愛い」
「……あまり遊んでくれるな半兵衛…」
秀吉は楽しそうな半兵衛に困ったように笑った後、石田を見た。石田は緊張した様子を見せながらも、背筋を伸ばし秀吉に向き合った。
「お前が来てくれて助かった、礼を言う」
「!も、もったいないお言葉…!」
「何か礼に渡せれば良いのだが、今は入院の身だからな…」
「そんなものは…!」
「おやおや、褒美は素直に貰うべきだよ。秀吉に恥をかかせる気かい?」
「!!!そ、そんなことは…!」
「はーんーべー」
「はいはい、ごめんよ」
ちょいちょい石田で遊ぶ半兵衛をじとり、と見てやめさせた後、秀吉は困ったように笑った。
「…我は貴様の主である我とは違うか…我に欲するものはあるか」
「……ならば…一つだけ…」
「ん?」
石田は僅かに顔を下に向け俯くと、ぽつり、と絞り出すようにそう言った。秀吉は静かに先を促す。ちょうどその時病室に家康と大谷が到着したが、半兵衛が口元に指立てて、しぃ、と合図した。
石田はぎゅ、と拳を握り締めた。
「どうか私に…許しを乞う許可を……!」
「………」
秀吉は僅かに驚いたように石田を見たあと、入口にいる家康に気が付いた。家康はぐ、と洋服の裾を握り締め、小さく頷いた。
秀吉はふっ、と小さく笑うと僅かに体を起こし、石田の肩に触れた。石田がそれに抵抗するまもなく、秀吉は石田を自分の方へと引き寄せ、ぎゅうと抱きしめた。
「!!!!ひひひ秀吉様ぁっ?!!?!」
石田の顔が混乱からか赤くなったり青くなったりする。半兵衛は石田の反応にぶっ、と吹き出し、顔を背けると肩を震わせて笑っていた。家康と大谷は驚いたように秀吉を見る。
秀吉は片手で、ぽんぽんと石田の背中を叩いた。
「…貴様が許しを乞うべきことなどない。恐らく貴様の主である我もそう言うだろう」
「!!」
「我は貴様を止めぬ。貴様の意思で進んでみよ。結果がどうであれ、それが意志を継ぎ貴様が選んだ道ならば、たとえそれで豊臣が滅びようとも何も言わぬ。…我ならば、そこで貴様を責めるような小さき男ではないはずだ」
「……!…ひ、ひでよしさっ、まぅ、」
「よく耐えたな」
「…ぁ、あぁあぁぁあっ…!!」
石田の目から、静かに涙がこぼれた。その頃にはもう笑っていなかった半兵衛は、小さく笑って静かに石田の頭を撫でた。
家康も拳で目もとを拭った。大谷はすぅと目を細め、慈愛を含んだ眼差しで石田を見つめていた。

聖なる夜のハプニング58

「…なんだい君たちは?どうやら病院での振る舞いも弁えない、躾のなってない人間のようだけど」
「……………」
「…」
「質問に答えることもできないらしいね。それとも耳が聞こえないのかな?いくらキックボクシング元日本チャンプとはいえ、女性の見舞いに対して随分な装いだと思うけど…家康君絡みかな?」
とある静かな病院の一室に、りんとした男の声が染み渡るように響いた。彼にそう言われても、黒スーツで銃器を持った男たちは、それらを二人に向けて囲んだまま何も言わない。不愉快そうに男たちを睨む男に、傍らのベットに腰掛けるように横たわる女性は小さく笑んだ。
「よい」
「でも秀吉、」
「立ったままでは体に障る、座れ半兵衛」
「………」
男、竹中半兵衛は豊臣秀吉にそう諭され、ベットの脇にある丸椅子に腰掛けた。


 「……この病院だ」
それから数分がたった頃、その病院の上空に大谷の輿に乗った大谷、石田、そして家康がいた。石田は一応外見的特徴を隠すため、三成のフード付きの服を着ていた。
家康は上空から秀吉の病室を指差す。
「あの部屋だ」
「よいな三成、可能な限り殺しはしやるな。それがこちらの太閤の為にもなる」
「分かっている」
「…すまない凶王さん……」
「何故謝罪する」
俯きがちにそう言った家康に、石田は静かにそう言った。家康はわずかに驚いたように石田を見上げる。
石田は、ぎゅ、と木刀を強く握り締めた。
「行くぞ刑部!」
「相わかった、進め進め」
石田はそういうと、たんっ、と軽く跳躍して大谷の輿から飛び降りた。その行動に仰天した家康が慌てて輿から身を乗り出し石田を目で追うと、大谷の数珠が石田の周りをかこい、病室の前で止めた。
ヒヒッ、と大谷は引き攣った笑い声をあげた。
「さて、主は中から行くのであったな。早に屋上に降りるとしよ」
「…なぁ、一人で大丈夫か…?」
「主の愛する三成がいかほどの強さかは知らぬが、凡人にはあれを目で捉えることもできぬ。心配には及ばぬ」
「…!そうか…」
大谷と家康はそう話しながら、屋上へと降り立った。
 一方の石田は窓の前ですぅ、と息を吸うと、大谷の数珠を足場にして窓を蹴り割った。
「!」
「な、なんだ?!」
ガシャアン、と派手な音がして、部屋の中に動揺が走る。石田は部屋の中に踏み込むと同時に勢い良く床を蹴った。
「緋色の雨よ!私を抉れ!!」
「!!今の声、」
目にも止まらぬ速さで男たちをなぎ倒していく石田の声に、半兵衛ははっとしたようにそちらを見、秀吉は驚いたように目を見開いた。
向けられた銃を下から振り上げた木刀ではじき飛ばし、返す刀で首を手加減して叩く。意識を飛ばした男の影を回って銃口から逃れながら、間合いを詰め、腹部を木刀で突き、流れる動きで柄頭でこめかみを殴り、昏倒させた。
「貴様、動くな!」
秀吉に銃口を向けながら石田に対しそう言った男がいたが、ぎろりと石田に睨まれ体を震わせ、その瞬間に三成の突きからの斬りつける攻撃をモロに食らって壁に衝突し、倒れた。
後ろから石田に襲いかかり腕を下から抱き抱えるように持ち上げた男がいたが、石田は一笑するとその場で跳躍してバク転し、バランスを崩した男をそのまま投げ飛ばし、壁に叩きつけた。

聖なる夜のハプニング57

「…薬液を、か…。火薬はどうなってんだ、どう発射する」
「雷管だよ」
後ろからひょっこり出てきた政宗が伊達の手から銃を取り、器用に操って弾を取り出した。ころん、と転がり出た弾の尻を指さす。
「こいつを叩いて弾く。こいつが火薬になる」
「これが…?」
「まぁ、この辺の仕組みは知りたかったら調べてくれや。で!どうするんだ、これから」
政宗はそう言うと弾を伊達に投げ渡し、居間の中に入った。三成も政宗に続いて、吉継達の方へ戻る。
「まずは主らの先生の安全の確保かの」
「ワシが…!」
「いや、お前行くの危ないだろ。狙われてんだろ?」
「……恐らく、私と家康はついでだろう。パラレルワールドの存在の証明…それで僅かな差での存在が手に入れば、と」
「普通漫画だと同じ人間は存在できねぇっていうけどな」
「可能性として考えれば………こちらに身代わりの何かがいるはずだ」
「その辺の話は後よ。……先から電話が通じぬ」
「!!」
静かに吉継が言った言葉に、さぁっ、と家康と三成の顔が青ざめた。ばっ、と勢い良く立ち上がった家康を三成が慌てて止める。
「待て家康!気持ちは分かるが落ち着け!」
「落ち着いていられるか!!先生が、秀吉先生が…ッ」
「……秀吉、様………?」
家康の言葉に、石田がぽつり、と呆然としたような声で呟いた。徳川ははっとしたように石田を見る。家康も二人の様子にはっ、となった後、石田に駆け寄ってその正面に正座し、頭を下げた。
石田は驚愕に目を見開いたいたが、家康の行動に戸惑ったように家康を見た。
「…貴方に会わせたかった人だ、名前を伏せていたことは謝罪する!」
「……ややこしい事はもはやどうでもいい…一つだけ答えろ」
「?分かった」
ぼそ、と石田が呟くように言った言葉に家康は不思議に思いながらも顔をあげた。
石田の目は、真っ直ぐに家康を見据えた。
「話を聞く限り、こちらの世界の秀吉様が、危険な状態にあられるのか」
「…その可能性が高い…!」
「…………刑部!」
「言い出したら止まりはせぬな」
石田は家康の言葉に一度目を閉じた後、開くと同時に立ち上がった。石田の言葉にやれやれと言いつつも嫌そうではない大谷が輿を浮かせる。
吉継は驚いたように二人を見た。
「…ちょ、ちょ、ちょ、待ちやれ!」
「そのような暇があるのか」
「今まで死んだ魚のようだった主がイキイキしておるのはまこと良いことだがちと待ちやれ。…主のややこしい事はどうでもいいという言葉で我もちと思いついたのよ」
「?何を」
ぽかんとしていた政宗は、にやりと笑ってそういう吉継に首をかしげた。
吉継の思惑が分かったらしい伊達はにやりと笑い、毛利は飽きれたようにため息をついた。
「いっそのこと、ド派手なPartyにしちまえばいい、そういうこったな」
「ヒヒ、いかにも。どうせならば手に負えぬくらいの大騒ぎにしてやろ」
「おいおい、学生のこいつらはまだしも、そんな事をしたらお前さん、」
体を起こした官兵衛の言葉を吉継は手で制す。す、と目を細め、官兵衛の頭を撫でる。
「…主やあ奴らの命がそれで助かるならば安いものよ」
「………………吉継」
「そうと腹を決めてしまえばさっさと行動を移すのみよ。一応知らぬ毛利と真田は巻き込めぬ、申し子と虎若子はここにいよ、よいな?」
「なんと……されど、承知いたした」
「ふん。好きにせよ」
吉継はパン!と手を叩いた。
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