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聖なる夜のハプニング40

翌日。吉継の長屋に、政宗と家康が姿を見せた。三成は朝から塾のバイトへ、元親もケーキ屋へバイトに出ていたからだ。
「オハヨーございまーす」
「吉継さーん。………あれっ?」
静かな長屋に足を踏み入れ居間に入ると、座卓に突っ伏すように眠っている真田の姿が目に入った。その隣には吉継も寝ており、二人の声に気がついた官兵衛が台所から顔を覗かせた。
「おーお前さんらか。長曾我部ならもう行ったぞ」
「知ってる知ってる。おっさんが迎えに来たから。つか、真田は?」
「昨日吉継が潰しやがった。それで代理にって刑部とやらが出てったぞ」
「え?…力仕事向いているようには見えないが…」
「サイコキネシス持ちみてぇだぞ、あれ。恐ろしいねー戦国武将ってのは。なんで念動力なんざ持ってんじゃ」
官兵衛はそう言いながら座卓に転がっている瓶やら缶やらを拾い始めた。政宗は僅かに目を伏せて考え込んだ後、官兵衛に向き直った。
「………こーゆー言い方はあれだけど、大谷さんに似たアイツがわざわざ代理になんて行くようには思えないんだけど」
「…西海の鬼が、凶王さんと揉めたって聞いてる。三成は刑部さんが騙したって」
「……。…小生もその揉め事に関しちゃよくは知らんが、その疑いはあるな…昨日の真田の話を聞く限りな」
「!なんか分かったのか、」
政宗の声色に何やら企んでいることを察した官兵衛は、抱えた瓶やらを台所に放り込むと傍らにあった毛布を寝ている二人に投げつけるようにかけ、政宗と家康を自室へ手招いた。
「…今この家にいるのは?」
官兵衛の部屋は一階にある。二階に続く階段の前を通りかかったとき、ふと政宗はそう尋ねた。
「申し子、穴熊、そんで凶王だ。申し子……呼びにくいな、あの日輪野郎は歴史関連の、それもこっちでの戦国時代の本が読みたいって言うから、適当に貸した。穴熊は日向ぼっこしてるってよ。お天道様の下に出たのが久しぶりだとか言ってたな。……凶王は知らん、吉継の部屋篭ったまま飯も食わん」
「…!そう、か……」
「ほら、入んな。今は吉継も入り浸ってるからちと散らかってるが」
僅かに表情を暗くさせた家康をちら、と見たあと、がらりと引き戸を引いて官兵衛は部屋に入った。
官兵衛の部屋はなかなか彼女らしい部屋で、壁一面に並んだ本棚にはぎっしり本が詰まっていて、窓ぎりぎりまで置かれたそれのせいで部屋は昼間でも若干薄暗かった。部屋の奥、窓際には折り畳める形の簡素ベッドと、その隣に木製の小さな机、反対側にパソコン用品が置かれた机が置かれている。それだけのシンプルな部屋だった。
ほぉ、と政宗は驚いたように声を漏らした。
「…すっげぇ部屋。研究者の部屋みてぇ」
「まっ、伊達に院まで進んじゃいねぇってこった。趣味みたいなもんになっちまってるからな、はは……。で、話か。椅子はないからベッド座ってくれ」
「あ、あぁ」
床に積み上がった本やら紙やらノートやらを脇によけながら官兵衛はそう言った。
家康と政宗は部屋の奥のベッドに腰掛けた。家康はじ、と布団を見下ろす。
「……今吉継さんここで寝てるんだよな……」
「ベッドが一つってことはそういう事だ」
「言っとくが昨日は酔いつぶれてあそこで寝たからな、一昨日だけだからな。……邪推するんじゃない!」
「いっだ!!」
「ったく、くだらんことすると話さんぞ」
「話といえば、なぜ虎若子に話を聞けたんだ?」
げんこつを落とされ悶絶する政宗を横目に、家康は官兵衛にそう尋ねた。官兵衛はふん、と鼻を鳴らしながらも、家康の言葉にベッド隣の机の椅子に座った。
「昨日の夜、その揉め事で小生の部屋であいつが寝ることになって迷惑かけたって謝りに来たんじゃ」
「?関係ないのに?」
「同じ軍に属してるからって。で、それから小生が余計なこと言ったりなんだりで、虎若子の人生相談みたいになっちまったんじゃ」
「なんだそれ…」
政宗は頭を押さえながら、不思議そうに官兵衛を見た。
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