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聖なる夜のハプニング64

「…聞いたって……」
「四国急襲、その事実だ」
「……んでそんな涼しい顔してやがる…!」
がんっ、と長曾我部は碇槍を地面に突き刺す。石田は刀を構えないまま長曾我部を見つめていて、大谷はゆっくりと三成の後ろに降りてきた。
「…刑部は貴様に自分と同じ不幸を与えたかったなどと言うが…何故貴様を選んだのか、そして何故西軍に入るように画策したのかを考えると、奴を私は責められない。責めるのならば、原因となった私を責めろ」
「!!三成、」
「!」
「なんだと…?ふざけんな!」
「ふざけてなどいない。だから貴様が望むものを聞いた」
「物で償えるもんじゃねぇ!」
「物に限ってはいない」
「………ならテメェの命をよこせといえばよこすのか?」
「………命はやれん」
石田は薄く目を細めると、静かに刀を構えた。長曾我部は石田を睨んでいたが、自分を見た石田の目に驚いたように表情を変えた。
石田は真っ直ぐに、長曾我部を見据えていた。
「私はここでは死ねない!」
「……石田……」
「私の命を望むというのならば…貴様の気が済むまで相手になる」
「……そうかよ…!だったらこの後悔を…嵐のように、アンタの刃で連れ去ってくれい!」
長曾我部はそう言うとどこか泣きそうな表情に顔を歪めながら地面を蹴った。石田もそれに合わせて地面を蹴る。中央で二人がぶつかり、また大きな衝撃が走った。
伊達や徳川は、呆然としたように二人の話を聞いていた。
「…どういう事だ。どうして大谷が白状する?!」
「…そうか……てっきりワシは、刑部がワシ憎さに起こしたものと思っていたが……三成の仲間を作りたかったんだな、あいつは…」
「それよりも石田だ。なんで奴はあんなに落ち着いてる?自分が裏切りに加担してたんだぞ?それに…」
「…死ねない、とは……あの方より、さような言葉が出るとは、正直、思いもよらなんだでござりまする」
「確かに…。……三成は、ここの秀吉公の所に行っていた。きっと、それが三成と刑部を変えたんだろう」
徳川はそういいながら、ぎゅ、と拳を握り締めた。真田と伊達は思わず顔を見合わせる。
「…見事なもんだぜ」
「………どう、なるのでござろうか…」
「こっから先は石田と西海の問題だ。俺らが首を突っ込むべきことじゃねぇ。続きと行こうぜ、真田ァ!」
「!!望むところ!!」
伊達はふっ、と小さく笑うと真田に向き直り、刀を構えた。真田は少しばかり驚いたように伊達を見たが、ニッ、と笑うと槍を構え、戦いを再開した。
それを確認した徳川は、二人のそばから離れると呆然としている大谷とぽかんとしている黒田のところへと向かった。
「刑部……」
「…、………」
大谷は徳川に名を呼ばれはっと我に返ったが、徳川の方を向くことはなかった。
ぽかんとしていた黒田も徳川の登場で我に返り、はぁ、とため息をついて鉄球に腰をおろした。
「…全く、なんで三成に話したんだ?お前さん。墓場まで持ってくもんだと思ってたけどな。心のうちもアイツにバレてるようだが?」
「黙りや」
「いいや黙らんさ、小生も関係者なんでね。……話しちまったら、わざわざお前さんが暗躍した意味が無くなっちまうだろうが」
「…………」
「刑部、お前は」
「黙りや!主に語ることなど何もない」
大谷はぎゃん、と数珠を振り回し、歩み寄ろうとしてきた徳川を遠ざけた。
「……秀吉に何言われたんだ?」
その直後、静かに黒田が発した言葉に、大谷はピクリと体を揺らした。
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