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聖なる夜のハプニング39

「主らの戦力がいかほどかにもよるが……同等の戦力ならば、まぁ東が勝つであろ」
「…!」
「西海の揉め事といい、大将たる凶王の様子といい、西軍は軍として不完全にも程がある。そうそう勝ち戦をできる軍ではないわ」
「………」
真田は吉継にもそう言われ、悔しげに顔を歪めだが反論はしなかった。薄々そう感じていたのかもしれない。吉継は肘をつき、ぽんと頬杖をつく。
「…主も、えらく迷っておるように見えるが?」
「待て、当てる。真田は大将になって間もないと見た」
「ほう?」
「それでいて急にならざるを得なかったって感じだ、前の大将が死んだか倒れたか…」
「なっ……!なにゆえ、」
「ほらな?」
「ヒヒッ、オミゴト」
見抜かれたことに真田は仰天したように官兵衛を見た。吉継はヒッヒと笑って真田の方を見た。
「主の振る舞いを見ておればなんとなく察しはつく。…研究者ともなれば、騙し合いも仕事のうちゆえ」
「ま、そこまで物騒なもんじゃあないがな」
「………意見の一つとしてお聞かせくだされ。政宗殿は某の好敵手…かねてより決着をつけることを切に望んでおりまする。…貴殿らならば、どちらを取られまするか」
ぱちぱちと瞬きしていた真田だったが、不意に姿勢をただし、真剣な面持ちでそう尋ねた。
官兵衛と吉継は意外そうに真田を見、それから視線を合わせた。官兵衛はふむ、と呟いて吉継のように頬杖をつく。
「…我ならば、立場をとるかの。いくら好敵手とはいえ所詮は敵よ。それに元々主の国ではないのならば、その名を残すためには自らを捨てることも必要であろ」
「…普通に考えたら小生も立場だな。伊達はあの態度見るからに生まれた時からトップの人間だったんだろうから、お前さんの悩みなんざ分かる筈ないさ、好き勝手言うだろうよ。それに、凶王は権現にしか興味無いだろ。だったら、うまいこといきゃ戦のあとでも決着をつける機会はあるだろうよ」
「………左様でござるか…」
二人の言葉に真田は眉間を寄せ、表情を歪めた。好き勝手言った二人だったが、また顔を見合わせた。
「……某は大将の器にあらず……今でもお館様の背中を探してしまいまする。お館様ならば、どうしただろうかと…」
「…まぁ、急に大将になるってのは厳しいもんがあるよな」
「徳川殿には敵わず…政宗殿にも失望され…某は……!」
「………主はちと背負いすぎのようよな」
震える声でしぼりだすようにそう言った真田に、吉継は静かにそういうと立ち上がり、台所に向かった。官兵衛は俯く真田にわずかに身を乗り出す。
「…お前さんはどうしたいんだ?」
「……某は…政宗殿と、以前のように向き合いとうござりまする、されど…武田を疎かにすることは出来ませぬ……!」
「………そうだな」
「まぁ一杯やりやれ」
台所からすぐに戻ってきた吉継は、そう言いながらどんと日本酒の瓶を真田の前においた。きょとんとする真田に小さめの杯を差し出す。
「折角戦場とは無縁の場に来たのよ。溜め込むのは一旦やめにしやれ、我らでよければ愚痴を聞いてやろ」
「……大谷、殿………」
「お前さんにしちゃあ随分と気前がいいな…面白がってるだろ?」
「ヒヒッ、このところ聞いた愚痴悩みは実にくだらぬどうでもいいものしかなかったゆえ。どうせ聞くのならば少しは骨のあるものが良いというだけのことよ。かくいう主も、聞きやるのか?」
「ここまで口出しちまったからにはな」
「…かたじけのう、ござりまする……ッ」
真田は、ぎゅ、とただでさえ握り締めていた拳をさらに強く握った。
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