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聖なる夜のハプニング49

「…某個人の話でござりまする」
「……人生相談か?」
「まぁ、そのようなものでござ………ぅううぅぅう………」
「どんだけ飲んだんじゃお前さん」
「…朝餉昼餉が食えぬほどには……」
「その状態で夕餉は食えたのか」
黒田は半ば感心しながらそう言い、床が抜けないように静かに鉄球を置いた。真田はごろんと寝返りをうって仰向けになった。げふっ、と息を吐き出す。
「…某はどうすればよいのか、まだ分からないのでござりまする」
「何をじゃ」
「政宗殿と向き合うことを取るか、武田に全てを捧げることを取るか………」
「?お前さんなら後者を選びそうなもんじゃがな」
そーっと布団の支度をする黒田に真田は曖昧に笑みを浮かべた。額に当てていた手を上に持ち上げる。
「……某はそこまでできた人間ではないのでござるよ」
「…別に自分を捨てることができた人間な訳じゃないだろうよ」
「!」
「刑部を見てみろ、いわば参謀だってのに好き勝手やってるじゃろ」
「…はは、そうかもしれませぬな…」
「だからお前さんがやりたいようにやりゃいいんじゃねぇのか。………強いて言うなら、圧力に屈すると後悔しかしねぇぞ」
「!」
ぼそりと黒田が漏らした言葉に真田は驚いたように黒田を見た。黒田は吉継にでも貰ったのか、タバコに火をつけて窓辺でふかしていた。
真田はゆっくりと体を起こし、訝しげな視線を黒田に向けた。
「…貴殿は黒田殿、でしたな。黒田殿も、何か……?」
「…誰にも話すつもりはないんでね」
「…辛くはないのでござるか」
「もう慣れっこさ」
慣れたようにそう言って煙を吐き出す黒田に、真田は僅かに眉間を寄せた。
「……、慣れるべきなのでござまりしょうか」
「は?んなことはないと思うぞ」
「………ならば何故、貴殿は…」
「…この枷のお陰で、ろくな事が出来ないからな。諦めがつく前に慣れちまったってだけだ」
「そうは仰りまするが、その割には…貴殿は酷く、」
「そいつはお前さんの勘違いさ」
「…黒田殿……」
真田の言葉を遮るように、だが静かにそう否定した黒田に、真田は表情を歪めた。黒田は吸い終えた煙草を窓際にあった灰皿に押し付けて消した。ふっ、と小さく笑いながら息を吐き出す。
「お前さんには関係のない話さ。ま、お前さんの話も小生には関係ないけどな」
「……もし、貴殿が某だったら、どうしたと思いまするか」
「あ?小生にはお前さんにとっての独眼竜のような奴はいないからな、自分の軍になったもんを動かして天下を目指すさ」
「………某は…どうすれば……」
「…、武田の若き総大将、ね……。だったら、後悔が大きい方を選んだらどうじゃ」
「え?」
うつむく真田に黒田はそう言った。思いがけない言葉に真田は驚いたように黒田を見上げた。
黒田は枷でつながった両手を、降参するかのように上に持ち上げた。
「失った時に、後悔が大きいだろうって方を選べばいい。いわゆる消去法ってやつじゃ」
「……………」
「少なくとも、他人に決めてもらうなんてのは、どっちにしたって後悔するだけだと思うぞ、小生は」
「……そうで、ござりまするな……」
真田は黒田の言葉に小さく呟き、窓から覗く空を見上げた。
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