スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

聖なる夜のハプニング62

黒田はジャラリ、と鎖を鳴らした。表情は前髪で隠されて見えない。
長曾我部は悔しげに眉根を寄せた。
「……その髪は隠すためかよ」
「こら、顔の話はやめんか」
「顔の話じゃねぇよ。……、なら、ならせめてこれは答えろよ。アンタは望んで四国を…」
「それを答えてなんになるんじゃ」
「はぐらかすんじゃねぇ!」
のらりくらりと答えない黒田に長曾我部はそう怒鳴り、地面を蹴って黒田に迫った。黒田は、はぁ、と小さくため息をつくと、ぶんっ、と腕を振り上げた。
ワンテンポ遅れて黒田の足元にあった鉄球が黒田の動きについていくように勢い良く宙を切り、ジャストタイミングで長曾我部に衝突した。長曾我部は自分の破槍でそれを受けたが、その衝撃を受け切る事は出来ず、そのまま横殴りに吹っ飛ばされた。
「くっ」
「元親、」
「…意外と食えねぇ奴だな、アンタ……」
飛ばされた空中で体勢を整えて着地し、長曾我部はぐっ、と破槍を肩に担いで、じろ、と黒田を睨むように見据えた。黒田がゆるく腕を動かしたことで、鉄球は黒田の体の前にすとんと落ちた。
「障害になるはずのその鉄球を武器にしちまう所といい、利用されてるはずだってのに絶対に口にしねぇ所といい…前者はともかく、後者はなんでそこまでする?大谷に弱みでも握られてんのか」
「弱み?まっ、あいつがこの枷の鍵を持ってるのは確かだけどな。別にそんなんじゃないさ」
「じゃあなんでだっ!」
長曾我部は言い切ると同時に再び地面を蹴った。黒田は軽く鉄球を引いて浮かせると蹴り上げ、鎖を掴んで長曾我部の攻撃を鉄球で受けた。そのまま剣撃に持ち込まれる。
ガンガンと鉄球と破槍がぶつかり鈍い音を立てる。黒田はその応酬をしながら口を開いた。
「小生はお前さんが望んでるような答えは持っちゃいない。脅されたとか弱みを握られてるとか、そういう程度の話じゃない」
「じゃあなんだってんだよ!」
「人に話すつもりはないんでね」
「どうしてそこまで大谷の肩を持つ?!特別仲がいいわけでもねぇだろう!?」
「なんでだろう、なぁっ」
「どわっ!」
剣撃の最中に黒田は隙を見て鎖から手を離し鉄球を長曾我部目掛けて両足で蹴り飛ばした。不意をつかれた長曾我部はもろにくらい、後ろへと吹っ飛ばされた。
両足を使って鉄球を蹴った黒田も、ごろりと受身をとって転がり、すぐに立ち上がった。長曾我部もごろごろと転がって衝撃の勢いを殺し、転がる勢いで体を起こした。
「………ま、若いお前さんにひとつ答えてやるとすりゃ、望んでやった訳ではないってことか」
「!!」
「それを言い訳にするつもりもないけどな」
「……………」
「ほれ、知らない方がよかったんじゃないのか?」
「……ッ」
黒田は長曾我部の表情の変化を見て、肩をすくめながらそう言った。長曾我部は黒田の言葉に、チッ、と小さく舌打ちし、武器を構えた。黒田は唯一覗く口元で小さく笑う。
「お前さんの目指す仇は目の前だ。何を躊躇することがある」
「………本当に食えねぇ男だなアンタ…!」
「言っただろ?…答えてなんになるんだってな」
そう言うと、黒田は腰を落とし、地面を蹴った。長曾我部はちっ、と舌打ちして破槍を一振りすると、黒田に相対すべく地面を蹴った。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2014年02月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28