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もうお前を離さない147

「はーい熱いから気を付けてくださいねー」
夕餉の時刻となり、宮野と村越はひょいひょいと人々の間を練り歩きながら味噌汁の入った椀を渡していく。真田と石田、そして大谷は別室で3人で食事を取っていた。
だが3人、いや正確にはその内2人は食事そっちのけでぎゃあぎゃあと騒いでいた。
「好き嫌いはなりませぬぞ三成殿!」
「好き嫌いではない!腹が減っていないだけだ!!」
「…。三成よ、主はそう言って朝も昼も食っていないであろ…」
「なっ…なんとぉぉぉぉっ?!なりませぬっ、なりませぬぞ三成殿!腹が減っては戦は出来申さぬ!今減っておらずとも、食わねばいつかは減りまする!!それが戦場であったら如何するのでござるか!」
「貴様には関係ないだろう!」
「か…ッ関係ないなど…っ」
「失礼しますよっと何喧嘩してんですか」
端から聞いていると非常にくだらない言い争いをしている所へ、宮野が入ってきた。
騒いでいる2人は気が付かない。
「食わねば死にまするぞっ」
「お二人さーん味噌汁ですよー」
「食わずとも死にはしないっ」
「石田さんそれは違いますそして話を聞けコノヤロウ」
「「だっ!」」
「ヒッヒヒヒ…だ、大事ないか三成…ヒヒヒヒヒッ」
宮野が話しながら投げつけた回収した椀が2人の頭にヒットする。大谷は石田の身を案じながらも、愉快そうに笑っていた。
「痛いでござる!」
「え、痛かった?常に信玄公と殴り合ってるからその辺大丈夫だと…ごめんね」
「私が違うだと?!」
「わ、聞こえてたんですね。三成さん、人間の三大欲求って知ってますか」
宮野は半泣き状態の真田の頭を撫でながら、顔だけ石田に向けそう尋ねた。石田は椀が当たった所を擦りながら首を横に振る。
「睡眠欲、食欲、性欲だと言われています」
「せ…破廉恥なぁぁっ!」
「み、耳元で叫ばないで…!何が言いたい、って言うのは、食事は人間に必要不可欠って事です。それに、食事を取らないと生きるために必要な栄養を体に補充出来ないから、栄養失調で死にます」
「…!」
「…言い返せぬなぁ三成…ヒヒヒッ」
「まぁ、精神的に負荷を抱えている時に食欲は減りますが…食べない、のではなく、食べられない、のですか?」
宮野の言葉に石田は目を伏せる。恐らくどちらかであるかは分かっているのであろうが、口にしたくないのだろう。
宮野はそんな石田の様子に小さく笑みを浮かべた。
「言いたくないなら言わなくても良いですよ。…ちょっとなら食べられるようなら、流し込める物作りましょうか?」
「…。…いらん」
「そうですか。じゃあ食べられそうになったら私か芽夷に言ってください、すぐ作りますから」
「…まて、なぜそこであの女が入る」
「そういえば、村越殿は何があったのだ?」
「…あー…ごめん、2人の秘密って約束なんだ」
「む…そうか」
「そういえば、アレは結局主絡みであったのか?」
「あ、はい。私絡みでした」
「何の話だ!」
「あ、そうだ三成さん、お願いがあるんですが」
1人置いていかれた石田が刀に手を掛けた時、宮野が石田の方を振り返った。
「すいません、あの子、しばらく預かって貰えませんか」
「…………………は?」
「あつかましい願い出であることは百も承知です、が、今私はあの子の傍にいない方がいいと思うんです」
「…………なんだと?」
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