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もうお前を離さない138

「…やれやれ、と。俺様も行くとしますか」
猿飛は苦笑を浮かべると地面を蹴り、真田の言葉を伝えるべく姿を消した。



 「それでは皆々様方、よろしくお頼みもうす!」
「狽ソょっと真田の大将!髪拭きなさいまったくもー!」
四半刻後、猿飛が六番隊の元へ向かうと、どこぞの武将のように上半身全裸の上に、打ち掛けを肩に引っ掛けただけの真田がいた。髪からは水が滴り落ちていて、猿飛は深々とため息をつく。風呂上がりに着衣も適当に、そのままやってきたようだ。
猿飛の言葉に真田が振り返る。
「おぉ、佐助」
「…一応服も髪もちゃんと洗ったみたいだな。そんなに急がなくてもいいんだぜ?もうとうに日も沈んだんだし、さっき配下の奴から石田軍も明日到着する速さだと報告も受けた」
「む…。…、ゆるりとしているのは落ち着かないのだ」
ぽいと手渡された手拭いを受け取った真田は、苦笑しながらそう答えた。猿飛はポリポリと頭を掻く。
「あんたが倒れちゃ元も子もないんだぜ?」
「昼間十分休んだ。それより、お前こそ休め。一睡もしておらんだろう」
「わー俺様の心配してくれてんの〜?」
「いざという時、頼りになるのはお前だ。お前こそ、休める時に休んでおけ」
おどけて言ったのに真面目に返されてしまった猿飛は目をぱちくりとさせた。
「…。真田の大将……アンタ、熱でもあるじゃないの?」
「むっ…熱などあるものか」
「…随分、変わったな、真田の大将。少し教えてくんない?何があったか」
細められた目に真田はふ、と目を伏せた後、猿飛を見た。
「…話すと長くなる。仕事に区切りが着いたら俺の部屋に来い」
「了解」
猿飛は薄く笑うとひゅっと音をたてて姿を消した。
真田は手拭いで髪を覆い、猿飛が消えた方向に目を向けた後、踵を返した。



 「……綺麗な空ですね」
「…月が綺麗だとはよく聞くが、空が綺麗とな」
「あぁ…私のいた所だと、周りが明るいのでこんなにはっきり星が見えないんです」
同時刻、大谷は野宿する為に留まった川原で、隊から少し離れた所で空を見上げる村越に気が付いた。ふよふよと近寄れば、先の言葉を投げ掛けられたのだ。
大谷はちらと空に目を向ける。そこには数え切れぬほどの星が瞬いているが、綺麗だと思った事はなかった。
「……、大谷さんは、石田さんの事、好きなんですか?」
「…何を突拍子もなくおぞましい事を」
「?お、おぞましい…?人が人を好きになるのは悪いことじゃないと、思います…けど………」
「よく考えて見るがよい、我が左様な想いを抱くと思うか?」
「いや、恋慕に限った好き、ではなくて…。…すいません、ただ…」
村越は着替えて履いていた袴をきゅ、と握り締めた。
「大谷さんは、石田さんのやる事に反対しないから、石田さんの事…信じてるんだな、って、思って…」
「…?よう意味が分からん」
「…口下手ですいません」
「……だが、少なくとも主が思うほど我らの関係は甘いものではない、と言えるであろうなぁ」
「甘い…?」
「そうよ。我らの関係は絆などという砂糖菓子のような物ではないのでな」
「……、そんな事…ないようにも見えますけど…」
「!」
「…私は貴方の事、何も知りませんけど。…貴方と石田さんを見てると、なんか…そう思うんです。どちらも相手を、一番信用してんだな、って」
「……ヒヒヒッ、まこと、女子の考えは我には理解できぬなぁ。困ったぁ、困ったぁ」
大谷はヒヒ、と笑い声を漏らした。
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