スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない140

「…って事はつまり、真田の大将が変わったのは相談出来たから、って事か?」
「…そうかもしれぬな…。…だがな、正直、出会った事で迷っている事もあるのだ」
「何それ?」
「…伊達殿の腹心の部下に片倉殿という方がおられるのだがな」
「右目の旦那も姓同じなの?」
「の、ようだ。…片倉殿に、ただ命を奪い勝利を収める事が、勝利とはいえぬと」
「何それ?」
猿飛の拍子抜けした表情に幸村は笑い、こつんと猿飛の額を小突いた。
猿飛は面食らった様に真田を見るので、真田はまた笑ってしまった。
「表情がただ漏れであるぞ、佐助」
「…あ、や、だってさぁ…。なら勝利は何なわけ?」
「己の意見を強制する殺し合いに、勝敗はない、と」
「は…へ?何それ…?…?何が言いたいのさ、その片倉の旦那は」
猿飛は小突かれた額を押さえながら、呆れたようにそう言った。真田は苦笑して空を見上げる。
「…片倉殿にとって、戦はただの殺し合いに過ぎぬのだ。片倉殿は、弔い合戦も、無用の長物と申された」
「…無用の長物って…。…、随分変わった考え方すんだな、その子の世界の人はさ?」
「黎凪の世界の日ノ本は戦をしないという法があるのだという」
「何それすごいね」
「…片倉殿と話していたら、…、戦そのものが、よく分からなくなってたな。…こんな事を言いたくはないが、この戦にも…意味があるのだろうか」
「…」
きゅう、と拳を作りうなだれた真田に猿飛は目を細める。
そこへ。
「建前はあると思うよ」
「おぉう?!」
「わーアンタ起きてたの」
「おはようございます…って言っても夜ですね」
宮野が目を覚ました。ぐるぐると肩を回しながら、宮野はうーんと小さくつぶやく。
「そもそも意味が何を指すのかにもよるけど…三成さんは仇を討つ為、権現は天下を統一する為戦ってる。だからまぁ、理由はある。理由っていうか、建前じゃないかと思う時もあるけど」
「…黎凪、お前は戦とは如何様な物だと思っておる?」
「私ー?…んー…私自身は参加した事ないけど…。…他に方法がなかったのかな、って思う時はある」
宮野は起き上がって布団を畳ながらそう、言う。
「それに、私が戦争と聞いて思い浮べる戦と、ここの戦は規模が違うしね」
「規模…?」
「私の日本は60年前に世界と戦争をしていてね」
「!」
「その時に原子爆弾っていう爆弾を1つずつ、広島…ここだと安芸にあたる辺りかな?そこと長崎に落とされて両方の町が壊滅したんだよ」
「壊滅?!」
「えぇ?!爆弾1つで…?!」
「原子爆弾っていうのは質量をそのままエネルギーに…つまり、重さをそのまま力に変えているからね。威力半端ないんだよ」
「なんと…」
「それに懲りて戦争を止めたようなもんだよ、こっちの日本は」
宮野はよいしょっ、と布団を持ち上げると、部屋の隅に置いた。その後、2人の方へ寄ってきた。
宮野は幸村の隣に腰を下ろすと、にこりと笑う。
「私は戦なんて馬鹿馬鹿しいと思ってる。…でも、そうでまでしなきゃ解決しない事も、もしかしたらあるんじゃないか、って最近考えてる」
「……そうか」
「でもね。…きっと、それも、時間が解決するとも思ってるんだ。…どれだけ憎くても、いつか人は忘れる。時間は、嫌でも動いていく」
「……!」
「そんな解決は嫌だよ。でも…、片方を殺して解決させても、その先にあるもの全てに痛みが付き纏う。…私はそう思ってる」
真田は宮野の言葉に宮野をじぃと見た後、視線をまた空に向けた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31