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もうお前を離さない135

宮野は傍らを走る猿飛を見下ろした。真田は彼らより少し前を進んでいるため、二人が話しているのには気が付いていないようだ。
「じゃなかったら、なんで佐助さんは幸村に付いていくんです?」
「…。んー」
「食いっぱぐれるのが嫌なら、徳川家康につけば一番食いっぱぐれないと思いますけどー?」
「お館様が挙兵した相手の下に行く程困ってないからねぇ」
「ふふふ。これからも幸村をお願いします」
「…。アンタ…変わってんねぇ…」
宮城は猿飛の言葉にまた笑うと、隣を走る猿飛から目を離し、前を見た。
「…アンタはもうここに馴染んでる。……本当、変わってるぜ」
猿飛の小さな呟きは、誰にも聞こえなかった。



その頃石田軍は。
「………あ、あの」
「…………なんだ」
「…、すいません」
「…………何がだ」
「……………ご飯」
「主らはもう少し早く話せぬのか…」
大谷は会話が上手く成立していない石田と村越にやれやれとため息をついた。
石田軍は休憩の為、軍の動きを止めていた。石田は一人木の傍らに立ち、村越はその木の根元でお握りを黙々と食べていた。大谷は二人を見て再びため息をついた。
「…あの、なんで幸村さんの所へ?」
「貴様には関係ない」
「…まぁまぁ、主に聞きたいことがある。主はこちらに来る前はどこにおった?」
大谷はしゅんと頭を垂れた村越に再び小さくため息をつくと、村越に話題を振った。村越はお握りを食べおわり、再びカバンを胸に抱いていた。
「………………、その。…この国では、ない所です」
「ほぉ…では主は異国より参ったと?」
「……そうですね。ある意味では、異国です」
「異国ならばその面妖な格好に説明もつく。…しかし気が付いたらあの場所にいたというのは解せぬな」
「…なんだかすいません、色々と…。…、ありがとうございます」
「…?!」
大谷は目を見開き、なぜ礼を言われたのだろうかと頭を捻った。
「…あ、あの、石田さん。聞きたい事が…あるんですが」
「……………………、なんだ」
一方の村越は座ったまま石田を見上げた。
「どうして私を…つれてきたんですか」
「貴様に言う義理はない」
「貴方に会った時…拾われるとは思いませんでした。…貴方がそんな事をするとは、思いませんでした」
「…………何が言いたい」
「…確かに三成、我も気になるなァ。主はこの者に興味を持ったか?」
大谷の言葉に石田はしばらく黙っていたが、じきに苛立った表情で振り返った。
「…………貴様の目に腹がたった」
「……、目?」
「貴様は何に懺悔するつもりだ」
「懺…悔?」
「貴様の目には贖罪の色しかない」
「しょく…ざい……」
ぽつりと呟いた村越に、石田はまた視線を前に戻した。
「そのくせ、許されたいと思っていない。……そんな謝罪するくらいならば最初からするな」
「…私だって…信じたくなかった」
「…貴様自身がやった事ではない事をなぜ貴様が詫びる必要がある。…、くだらない」
「…ッ、私が聞きたいのはそんな事じゃありません。腹がたつならなんであの場で切り捨てなかったんですか」
「………………」
石田は答えなかった。村越の方を見ようとすらしない。
大谷はその石田の姿に何か感付いたらしい、驚いたように目を見開いた。そして目を細め、面白そうに肩を揺らした。
「ヒッヒヒヒッ…。三成、主自身も分かっておらぬのだろう、何故ついてこさせたか」
「…くだらん」
石田は大谷をちらと見てそう言い捨てると、どこかへ行ってしまった。
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