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もうお前を離さない133

「なっ黎凪!」
「花の慶次って話に登場する前田慶次曰く膝枕は正面からの方が良いらしいんだけど、正座だとすぐ立てないから横向きで勘弁してね」
「はっ…?!そんな事は聞いておらぬ!ひ、ひざっ、膝枕など破廉恥な!!」
真田は真っ赤になってそう叫んだ。横にされた真田は頭を宮野の太ももに置かれたのだ。
宮野は真田の言葉にはぁとため息をつく。
「いつまでも破廉恥大魔王なんだから…。だって石枕にしたら痛いし腕枕にしたら腕痺れるでしょ」
「ま、枕などいらぬ!寝ろと言うなら座って眠る!」
「座って寝ると傾げた方の首が痛いよ」
「〜〜〜ッいい加減…ッ?!」
いい加減止めろ、と言い起き上がろうとした時、目の前に自分が巻き付けていたはずの鉢巻きを突き付けられた。起き上がろうとしても起き上がる事が出来ない。
「人間って寝そべってる時に目の前に紐をこう渡されると起き上がれないんだって」
「〜〜〜……。…分かった、寝ればよいのだろう!」
「そういう事。…おやすみなさい」
「…少ししたら起こせ」
「出発の少し前にちゃんと起こすよ」
真田はしぶしぶそう言うと目を閉じた。それを確認した宮野は鉢巻きを離し、小さく笑った。
「……」
真田は枕になっているものの感触に落ち着かなかったが、思ったより疲れていたのか、すぐ眠りに落ちた。

いつも見る水底の夢は、見なかった。





 「…あらあら。ぐっすり寝ちゃってまー」
「あ、佐助さんお帰りなさい」
ひゅっ、と小さな音をたてて猿飛が宮野の前に姿を見せた。爆睡する真田にやれやれと小さなため息をつく。
「でもま、大将がいなかった間大将に何があったかは知らないけど、ちょっとは自分に自信持てたみたいだから助かったよ」
「そうですか?」
「そうそうー。何か決断するたびによくお館様のように振る舞えているだろうか、とか聞いてきたもんだけど、この出立の時は迷ってなかったからね」
「…伊達さんと最後に会った時に、何かあったんじゃないですかね」
宮野は小さくくすりと笑って幸村の頭を撫でた。猿飛はじぃと宮野を見る。
「……その伊達さんって誰?」
「私の知り合いの、組織の頭の人です。ちょっと物騒な組織なので、部下が殺されたりした事もある人なんですけど、いい人ですよ」
「いい人…ねぇ」
「名字は同じですが、独眼竜とは似てませんよ?」
「あ、そう。…でもなんでそれで真田の大将が?」
「んー、私はその時その場にいないので分からないです。ただ、凄い気は合ってたみたいでした」
あれやこれや頭の上で話されているのに、真田は目を覚まさない。宮野の頭を撫でる手も止まらない。
「伊達さんも大将格の人ですから。…幸村の重責を、少し和らげてくれたんじゃないですかね」
「重責?」
「突然全部背負う事になった、重責です」
「……………」
「そんな甘い事言ってられない情勢かもしれないですけど、突然任されるのは不安が一杯ですからね。…自信を持てればいいんですけど」
「…それとなーく大丈夫だとは言い続けてるんだけどねぇ」
「心は他人にはどうしようもありませんからね。他人には手助けしか出来ないし、それはただ遠くから呼び掛けている程度にしかならない」
「ッ…」
「…歯痒いですよね。何もできないって」
宮野は最後にそう言い、寂しげな笑みを浮かべてそれきり黙ってしまった。
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