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もうお前を離さない125

「変だって周りには言われましたけどね。はは」
「理由もなしに面倒な事引き受ける奴なんて、普通いないもんねぇ」
「面倒…ですかね?」
「博ゥ覚なしっ」
「…黎凪、もう…大丈夫か?」
「!…うん、大丈夫!」
今までとかわらない、落ち着いたように見えた真田は、そう宮野に声をかけた。宮野は驚いた表情を浮かべた後、笑ってそう返した。そこに嘘はない。
「そうか。…よかった」
「…幸村も、右腕大丈夫?」
「ッ!」
「…お?」
指摘されて幸村ははっ、と右腕を押さえた。実は先の戦で右腕上腕を強打されていたのだ。
「その様子では折れてはなさそうだね。その傷は熱い?」
「少し、な。あまり痛くはないのだか…」
「…じゃあ打撲かな。とりあえず冷やして。で、痛みと腫れが引いたら蒸した布とかで少し温めて」
「…。何故?」
宮野は陣幕の外にいったん出て、持っていた手拭いを濡らして戻ってきた。
「打撲してるんなら内出血してるから、まず内出血をおさえる為に冷やし、腫れが引いたら出血は止まってるからその血を吸収させるのを早める為に少し温めた方がいいんだって。打撲に効く温泉とかもあるんだよ」
「…詳しいな」
「伊達さんが言ってた」
「独眼竜が?」
「あ、いやいや、伊達政宗じゃないです。同姓の私の知り合いです」
「そういえば伊達殿は医者を志しておられたのであったな」
「医師になる為にじゃ、ないけどね」
宮野は手拭いを服を脱いだ幸村の右腕上腕の腫れた部所に押しあてた。ぴりりとした痛みが走り、幸村はぴくりと眉を動かす。
「…、あの後どうなったのだろうか」
「あの後?」
「あぁ…俺達がここに来る時に警察なる者達に追い掛けられてな。…こやつの世界で世話になった方も共に追われたのだ」
「多分大丈夫だと思うけど…伊達さんと明智さんがいたし」
「…明智?」
「明智光秀の血族じゃない、って聞きましたよ」
「だ、だが明智殿は…」
あの出血では、と言い掛けた幸村の唇を、宮野の指が押さえる。宮野はくすり、と笑った。
「伊達さんは仲間は全力で守る人だよ。…伊達さんに明智さんの事を話したんなら、多分何かしらの手は打ってる。…それに私達が心配してもどうしようもないよ」
「…、案外淡白なんだねぇ」
「淡白、というか…、どうしようもない事を考えるのは止めたんです。考えた所で何もできないし、自分が虚しくなるし。…自分が出来ることだけを、考えようと」
じ、と傷だけを見てぼそりと言う宮野。ぴくり、と猿飛は肩を動かした。
「ふぅん…。…君、苦労してきたんだね」
「大した苦労はしてませんよ」
猿飛が目を細めて言った言葉を、宮野はさらりと、笑い流した。まるで聞き慣れたかのように。
「…よく言われたのかい?」
「まぁ、そうですね。親が殺されてからはよく言われます」
「…殺した奴が憎いとは思わないのか?」
「………、分からないんです。憎いのか、憎くないのか」
「…、ふぅん」
笑って答えた宮野に猿飛は目を細めた。

「はい、大丈夫。冷えたら取っちゃっていいよ」
「うむ。すまぬな」
「いえいえ。私はこれくらいしかできないから」
「…。佐助!腹が減ったぞ!」
「狽っ。藪から棒に何!はいはい、相手方にも動きが無いから食事の支度頼んでくるから」
「うむっ」
ひゅんと音をさせて消えた猿飛を見て、真田は宮野を振り返った。
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