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もうお前を離さない143

「あー青カビくっさ…!」
陣営から離れた所に餅を処分し終えた宮野は、ぱんぱんと手を払いながら陣営に戻ってきた。途中で、石田軍とすれ違う。
ぱた、と宮野の足が止まった。
「……………芽…夷?」
ぽつり、と呟かれた言葉に、宮野の視線の先にいた女が振り返った。
「………黎凪…ッ!」
「…芽夷ぃぃぃぃ?!」
村越である。宮野はぶんぶんと首を振って再び村越を見た後、一目散に駈けてきた。俯く彼女に宮野はがしりと肩を掴む。
「芽夷ッ!なんでここに?!」
「れ…な…。…黎凪ぁぁあぁあぁぁぁ」
「うおわぁあぁぁ?!」
勢い良く顔を上げた村越の目から涙があふれ、ぎゅうと抱きつかれた。
「やれ騒ぐな。…はて?」
「どどどどうした?!…酷い顔してるぞ。何があった?!」
「れいなぁあぁぁああぁぁあ…」
「あぁもう、泣くな!な?ほら、私絶対怒らないから、何があったか言ってくれない?」
「黎凪ぁ…ごめんなさい……」
「私に謝らないで?私怒ってないよ。ほら、泣かない泣かない。折角可愛い顔してるんだから」
「……あれが例の友人、か…」
その様子を見ていた大谷は小さく呟いた。宮野はぽんぽんと村越の背を叩きながら、こちらを見る大谷に気が付いた。
「あ、ど、どうも…」
「我が名は大谷吉継。主は」
「あ、宮野黎凪と言います…。初めまして。あの、なんでこの子が石田軍に…?」
「ヒヒッ、こちらに来る道中、道で寝ておったのよ。そして、三成が連れて参れと申した故、連れてきたのよ」
「えっ?あ、そうなんですか?!…あ、ありがとうございます。というより、どうぞ陣入ってください、長旅ご苦労様です」
「気にするな、三成の話が終わればすぐに移動せねばならぬ故なぁ…」
「あー…そうですか」
「それよりその女子、主に預けたいのだが」
「え。あー…芽夷、ここでちょっと待ってて?……大谷さん」
宮野は村越から離れ、大谷に近寄った。ちらり、と村越を振り返った後、少し迷いながら、宮野は大谷の顔に自分の顔を寄せた。
「…自分勝手なのは承知の上で言わせてもらいます」
「…何だ、言うてみよ」
「まだ…話を聞いていないので確実ではありませんが。芽夷は意味もなく謝ったりしません、だから、私絡みの事で何があったんだと思うんです。…、もし本当にそうだったら、芽夷をそちらで預かって頂けませんか」
宮野の言葉に大谷は刮目した後、ヒヒヒ、と笑い声を漏らした。
「…何を言うかと思えば」
「私達はこの世界の人間じゃありません。…だから、芽夷に帰る場所はないんです」
「…この、世界の人間ではない?」
「はい」
「……些か解せぬ、如何様に参るというのだ?」
「細かい所は私にも分かりません」
「ヒ、ヒヒヒッ!左様か」
真っすぐな目で言い放つ宮野に、大谷はまた笑い声を漏らす。
ふぅ、と笑いを収めた後、大谷はじろりと宮野を見た。
「…しかし、我には決められぬなぁ。三成に聞きやれ」
「そうですか…分かりました、ありがとうございます」
「…ほ?」
「芽夷、こっち来てこっち!あーもー目ぇ真っ赤にして。ほら、落ち着いて?大丈夫だよ、大丈夫だから」
「黎凪…」
「落ち着いて。…私は待つから」
「……うん」
宮野は村越の返答に笑みを浮かべると、村越の手を引いて陣営に戻っていった。
「…村越といいあの女子といい、訳の分からぬ所で礼を口にする者よ」
大谷はその2人を見送りながら、小さくそう呟いた。
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