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もうお前を離さない137

「しかしいい天気だなー。今ここで昼寝したい…」
「ま、待てッ!せめて縁側で寝ろ縁側で!」
「…。やだ眠い私寝る」
「やっ…?!…ならば致し方あるまいっ」
桜の木の根元で眠りそうになる宮野を、真田は姫抱きに抱き抱えた。
宮野はびっくりして真田を見た。そして。
「うわぉっ!わーい幸村力持ちー!」
「んなっ!!だっ、抱きつくなっ!!黎凪、お前なにかおかしいぞっ!」
テンションがおかしいままだったため真田に思い切り抱きついた。完全に周りが見えていないようだ。
「一体何があった!」
それを本気で心配する真田は天然な人間であるといえよう。片腕で宮野の体を抱え、もう片方の手を額に添える真田に、宮野はくすくすと笑った。
「人は疲れが限界に達すると壊れるのでござるー」
「…?!…!つまりは休まぬからそうなるのだな?!何故休まなかったのだ!眠れなかったというのは偽りであろう!!」
「だって寝たら思い出すんだものー…」
「…ッ」
「……………Zzz…」
「?!…なんとっ寝たのかっ!?」
宮野は真田に抱きついたまま眠りに落ちてしまった。度々真田に抱きついたまま眠ってしまう宮野であるが、それだけ真田の傍にいることは安心できる事なのだろうか。
「…幸村様、流石です…!」
「いや、そこは反応違うんじゃない?」
そして真田同様どこか少しおかしい観点の武田軍の兵に猿飛は突っ込みをいれてばかりである。
「真田の大将、どうすんのさ?」
「…腕は解けた。致し方ない、俺の部屋で寝かせてくる。佐助は先に配陣を始めていてくれ」
「了解、と。…真田の大将」
「?なんだ」
「…いーや、なんでもない。さっさとしてね」
「承知したっ」
真田は宮野を抱き抱え、起こさないように静かに走っていった。

 「…、ふぅ」
女中に敷いてもらった布団に宮野を寝かせ、真田は一息ついた。女中の視線が痛かったが、答えるのが面倒に思えて真田は何も言わなかった。
眠る宮野の頬をす、と撫でる。
「…、殺させてしまったな、黎凪」
ぽつりと小さく呟く。
「…同じになった、か……」
どうやら猿飛と宮野の会話を、僅かながら聞いていたようだ。
真田は眉間を寄せる。
「……。…それでも…俺についてくるという選択に、喜ぶなど…。…大概俺も弱くなったものだ」
口に出たのは、自嘲の言葉。
真田は静かに手を離すと、ぎゅうと強く拳を作った。
「……、歩みを止める訳にはいかぬ」
真田はそう絞りだすように呟くと、踵を返し部屋から出ていった。
 「一から三までと五から八までは配置についた。四には見張りに立ってもらってる」
「交替交替で休むよう、伝えてくれ。俺は石田殿が参られたら六から八の門の護衛の方々には特に警戒するよう伝えて参る」
「いや、そんなのは部下の仕事だから…。…それより真田の大将、湯汲みして来たら?その有様で客人には会えないっしょ?」
「む…そういえば血もろくに落としていなかったな…。水汲みをせねば」
湯汲みをしてくれと言ったのに水汲みをするという真田に、猿飛ははぁとため息をつく。
「いや、風呂頼んどいたから湯にして。傷、温めた方がいいんだろ?」
「いや、だが、某一人…」
「腕は武人の命だろ?念には念をいれて、な?それに、あんたは大将なんだ、無様な格好はしないでくれよ。髪についた血は湯じゃなきゃ落とせないだろ?」
「…む……。…分かった。四半刻で出る」
「ちゃんと洗うんだよー」
真田はふぅと息をついて、風呂場に走っていった。
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