スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

もうお前を離さない130

「そう怯えるな、とって食いなどせぬ」
「………え…あれ…?」
少女は大谷の言葉に恐る恐る二人を見、そして小さく声を上げた。

「…大谷、吉継…石田三成……?」

「!」
「貴様何者だ!」
大谷は僅かに目を見開き、石田は動揺を見せずに腰に構えた刀を掴んだ。少女の肩がびくりと跳ねる。
「…落ち着け三成、我も主も特徴的といえば特徴的な格好よ。知っていても不思議はなかろ」
「…ちっ。…貴様はなんだ」
「………村越…芽夷…」
少女はそう名乗り、ぎゅうとカバンを抱く力を僅かに強めた。
「主は何故道で寝ておった?」
「…気が付いたらここにいました」
「…貴様…馬鹿にしているのか」
「ッ本当です!なんでここにいるのか分からないんです!だって…ッ気絶する前は…父さんが……ッ!!」
「…?」
かたかたと小さく震えだした村越に、石田は刀から手を離す。村越の手が、頭を乱暴に掴んだ。
「父さんが……母さんを…ッ!!」
「………、殺したのか」
「……ッ」
村越は小さく頷いた。石田は小さく息をついて、しばらくじぃと村越を見た。
「…主は近くに親族は居らぬのか?道にいても迷惑なだけよ」
「………幸村さん…」
「?…はて、それは真田幸村の事か?」
「幸村さんの所に…親友がいます」
「ならばそれを頼るがよかろ。甲斐にはこの道を行けば着くゆえなぁ。…?いかにした三成」
大谷はしばらく村越と問答をした後に、石田がじぃと村越を見ている事に気が付いた。石田はそれには答えずしばらく見ていたが、不意に視線を外し、ただ一言。
「……連れてこい」
そう言った。
「…!」
「?…?」
村越は驚いたような、大谷は訳が分からないといった表情を浮かべている。
「…どうせ真田の所へ行く」
「…やれ、明日は槍の雨でも降るかもしれぬなぁ…」
「…文句があるのか」
「文句なぞあるものか、ヒヒッ。やれ女子よ、凶王が命じておる、ついてくるがよい」
「…、はい…」
村越はよろよろと立ち上がると石田と大谷の後をふらふらとついていった。



同時刻、真田達は上田に向け移動していた。
「ふぇ…ぶぇっっくし!」
「なっなんだ?!」
「あ、ごめん幸村、うちの家系、くしゃみうるさいんだ」
「…君さぁ、気にする所がちょっと変だよねー…」
「時たま言われます」
「博桙スま?!」
真田と宮野、そして猿飛は先頭でそんな話をしている。最初宮野は馬に乗るのに悪戦苦闘していたが、今ではもう慣れたのか普通に馬を操っている。
宮野はふぅ、と小さく息をついた。
「しかしあれだね…昨日の夜から走り通しだって言うのに、馬は元気だね…」
「初めて馬に乗ったっていうのにここまでついてこれてる君も十分元気だと思うんだけど」
「まぁ、私自身は動いてませんし…。…あ、それいうなら一番元気なのは佐助さんですね!」
「…なんかあんま嬉しくないのはなんでだろーなー」
真田は二人の会話に小さな笑みを浮かべながら、前を見据えた。
「この街道を抜ければすぐ山林に入る。そこで少し休憩しよう」
「お。じゃあ俺様は先に行って誰もいないか見てくるぜ、真田の大将」
猿飛は真田の言葉に勢い良く地面を蹴り姿を消した。
「忍って体力あるよね…なんかもう不気味なくらい」
「ぶき…っ。…それ、佐助には言うなよ…」
真田の言葉に宮野は苦笑を浮かべた後、ぶるりと身体を震わせて思い出したように真田を見た。
「ねぇ幸村。私の気のせいかもしれないんだけど…」
「?なんだ」
「…朝からなんだかざわざわする。…星の声に触れた時にも似たようなのを感じた」
「!」
真田は僅かに目を見開いた。
<<prev next>>
カレンダー
<< 2011年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31