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もうお前を離さない134

「……なんか、真田の大将がアンタを好きになる理由が分かった気がするわ」
「?!えぇ!?なんですかそれ?!」
「なんとなくだよ。それより、アンタも休んだら?アンタだってずっと起き通しだろ?」
「あー…いや、眠くなくて」
猿飛の言葉に宮野は曖昧な返事を返した。不服そうに見返せば、宮野は苦笑する。
「確かに疲れてはいるんですけど、目閉じると…余計な事思い浮べちゃって」
「…そういや…初めて?」
「初めてです。…本気で首を打ったのは」
宮野はぽつりと言って幸村の頭を撫でる手を止めた。
目を閉じると、殺した男が目の裏に浮かぶのだという。宮野はしばらく真田を見ていたが、不意に顔を上げて猿飛を見た。
「別に後悔はしていません。ただ…同じになったんだと思うと、少し気持ち悪くて」
「同じ…?」
「私もまた、誰かの家族を殺したんだな、と、思うと、…」
「…、あぁ、そういう事」
―黎凪は母上殿と兄上殿を何者かに殺され、その罪を父上殿によって被された過去がある。
真田の言葉が蘇る。猿飛はかり、と親指を噛んだ。
「…アンタはそれでも真田の大将についていくのか?」
「ついていきます。…一緒にいたいですから。だからこの世界にも来ました」
「確実に殺しをするはめになるぜ?」
「…覚悟はしてきています」
猿飛の言葉に、宮野は挑戦的な笑みを浮かべてそう、返した。




 「少ししたら起こせと申したではないかっ」
「だって爆睡してたしそもそも出発のだいぶ前に起こしたじゃないっ!」
「だが黎凪、お前寝ておらぬであろうっ!!」
「眠れなかったんですー!」
「おぉ…!痴話喧嘩か?!」
「はいはい、見てないでちゃっちゃと動く動く。真田の大将、痴話喧嘩止めて」
「「痴話?!」破廉恥な!」
「なんで破廉恥?!」
出発時にはまたぎゃあぎゃあと小さな騒ぎになっていた。ただ単に真田と宮野が喧嘩しているだけなのだが、武田の兵からしてみると痴話喧嘩に見えるらしい。猿飛はやれやれと呟きながら二人を諫めるが、余計な騒ぎになる。
「真田の大将も、いくら俺様だからって俺様が来ても起きないぐらい疲れてたんだろ?」
「むむむ…!」
「上田に着いたら多分休む暇ないぜ?別に誰も怒りゃしないんだから、気にすんなって」
「…。もうよい、行くぞ」
真田ははぁ、とため息をついて馬に跨った。

「…黎凪、大丈夫か?」
「大丈夫?大丈夫だよ。…眠くなかっただけだから」
「…。上田に着いたら、休め」
「…ん。分かった」
ぶっきらぼうに言われたが、宮野は嬉しそうに笑った。真田は宮野の方を見ずに、ぷいとそっぽを向いた。覗く耳は僅かに赤い。
「…はははー、真田の大将、顔真っ赤だぜ〜?」
「さっさささ佐助ぇぇぇ!!揶揄するではないわぁぁぁぁぁ!」
「どっひゃー!!ちょっと大将、容赦なさすぎ!槍振り回すのはやめてくんない?!」
「あはは!幸村危ない危ない」
「ちょっとぉ、笑い事じゃないんだけど?!」
やたら穏やかというか、わいわいした行列である。
真田はぶんぶんと頭を振ると、馬の腹を蹴った。
「…はぁ、全く…真田の大将、本当にアンタの事好きなんだねぇ」
「はは、そうですね。…あまり人に好かれた事はないので、ちょっと戸惑いますけど」
「へぇ、そうなんだ」
「佐助さんも幸村の事好きでしょう?」
「はぇ?何それ」
猿飛はすっとんきょうな声を上げた。
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