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もうお前を離さない132

「…宮野サン、アンタはさぁ、なんか…凄い前向きに生きてるよね」
「そうですか?」
猿飛は胡坐をかいた上に肘を伸せ、手に顎をつけながらそう言った。宮野はきょとんとした表情を浮かべる。
「うん…いや、前向きっていうより、外には自分の楽しい事しか出してない感じがすんだよねぇ。悲しい事とか辛い事は全部隠してる」
「!」
真田は猿飛の言葉に僅かに目を見開いた。
「あちゃー…そうですか。今まであんま言われたことないけどなぁ…」
宮野は頭をぽりぽりと掻きながらぼやく。
「…だが黎凪、お前…我慢するのが得意だと申していたな」
「えぇ?何それどんな特技?!」
「…なんか、多分、親のせいもあると思うんですけどー…」
「親御さん?」
宮野はうーん、と言いながら片手で持っていたお握りの残りを弄んだ。
「昔っから何かと泣くと余計怒られたんですよ。めそめそ泣くなって」
「!」
「親父さんは叩いてくるししかも痛いし」
「拍翌フ子叩くの?!」
「何も怒ったりいらついたりしてないのにずっと仏頂面して苛々してるからこっちがイライラするとか言われたり…なんか、結構怒り方が理不尽だったんですよね。…それに、なんか相談しても『あんたが悪いんでしょ』だったから相談も出来ないし…、って事で、相談しないし、それにただでさえ普通にしてるだけで怒られたんで色々言わなくなってたとは思います」
「…なんと…」
「…道理でねぇ…」
すらすらと言われた内容にしばらく二人は絶句していた。宮野は苦笑する。
「まぁ、よく考えたら友達には結構ばれてたかもしれませんね。…でもそのお陰か、友達といる時が一番楽でした」
「…………………」
「…、ふぅん」
「それに、私より苦労してる人は五万といるから、自分を不幸だなんて全然思ってないです。相性が悪かった、それだけで、確かに私が仏頂面してるのも悪い。…それに、人と考え方が変に変わってもいますしね。そういう意味では親の言うことも正しい」
「…」
「だから私は今の自分、嫌いではないですけど、それでもやっぱり、隠してるって分かると気分悪いもんですかね?」
「…気分悪いっていうか、信用されてない気はするけどねぇ」
「げっ!…そうですかー…」
はぁ、と小さくため息をついて宮野は頭を振った。
「…まぁ、あんまり気付いてる奴はいなさそうだけどね」
「…変えた方がいいとは思うんですけど、中々……」
「…。だが、武田の兵は斯様な事を心配こそすれ、嫌う事はないぞ」
「!」
「その、だから、あまり難しく考えるな。お前は、お前のままでいい」
真田はしどろもどろになりながらもそう言い、ぽんと宮野の頭に手を置いてわしゃわしゃとかき回した。
「…幸村。……、ありがとう」
宮野はそんな真田にしばし瞬きを繰り返していたが、そのうちに笑みを浮かべた。
猿飛はふぅ、と小さく息をつく。
「あぁ〜熱い熱い」
「狽ネっ、なんだ佐助、その言い方はッ」
「もう俺様は退散するわ。ちょっとこの辺りの様子も見てくる」
猿飛は後はお二人でどーぞ、と最後に意味深に呟いて姿を消した。
「…ふぅ」
「……幸村少し寝たら?伊達さんと手合わせした後から休んでないでしょ」
「むっ、そんな事はない!」
「…。疲労で馬から落ちて死んでも知らないよ」
「うっ…馬から落ちて死にはしなあっ?!いだっいだだだっ!」
「いいから少し寝なさい!そのための休憩でしょ!」
宮野は真田の髪を引っ張って無理矢理真田を横にした。
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