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もうお前を離さない139

「…あの、ぶしつけな事、聞きますが…。…大谷さんはなんで…浮いているんですか?」
「…ヒヒ、この通りの病の身では、動く事もままならんでなぁ」
「そう…なんですか…。…念力みたいなものなんですか?」
「はて、なんであろうなぁ…ヒヒヒッ」
「…。…あっ。秘密ですよね。すいません野暮なことを」
「…やはり主はよう分からぬな。…、真田の元におるという主の友人とやらは、真田とどういう関係なのだ?」
大谷は小さくため息をついて首を振ると、ふと気になっていた事を口にしてみた。
真田を“幸村さん”呼びするあたりから、どうやら親友という者は真田と親密な関係にあるらしいと判断したのだが、いまいちはっきり掴めない。村越はまだ素性がよく知れないからこそ、聞いてみたのだが。
「恋人です。幸村さんの」
「…は……?」
予想だにしなかった返答に、大谷は彼らしからぬ間の抜けた声をあげてしまった。
「…真田は女子が苦手と聞いておったが…」
「そうですね、確かにすぐ破廉恥って叫んでました」
「…ほぅ…恋人とはまた…ヒヒヒッ」
「……、元気かな、黎凪…」
村越はぽつり、そう呟いて空を見上げた。



 同時刻、真田はというと。
「入るぜ真田の大将」
「うむ」
猿飛が真田の部屋を訪れていた。宮野はすやすやと眠っている。
真田は縁側に腰掛け、ぼんやりと月を見上げていた。
「…、さて、何から話すべきか…」
「伊達っていう男の事、取り敢えず聞きたいんだけど」
「伊達殿か?」
「どういう人なんだい?あの子はいい人だって言ってたけど」
猿飛は真田の少し後ろに座った。真田は猿飛を振り返る。真田は薄く笑みを浮かべていた。
「そうだな…確かに、素晴らしき御人であった。伊達殿は伊達龍也殿と申され、自警団という、専ら防衛を専門とする、組織の次期大将である御方なのだがな。…、安心しろと、仰ってくださったのだ」
「安心…しろ?」
「不安にならんでよい、怯えなくてよい、…今の某で、大丈夫なのだと」
「!」
「伊達殿も、大将として…部下が己を守り死していくのが耐えられぬと、仰っていてな。…こんな言い方は失礼なのだが、…伊達殿にも、大将にも不安な事はあるのだと、少し安心したのだ」
「………………」
「…伊達殿は、不思議なお方であった。人の心が分かるのではないかと思う程だ。…黎凪の事も、親身に思ってくださっていた故、黎凪も伊達殿は信頼しておるのだろう。…何せ、向こうでは黎凪は、家族を殺し、その罪から逃げおおせた性悪女だったからな」
「…なるほどね。大将の事を一人の男かつ大将として、その龍也さんは接してくれた、って訳か」
「そうだな。…、この国の者ではなかった故、俺も弱音を曝け出せたのかもしれぬ。…政宗殿には口が裂けても言える事ではない」
「そりゃそうだな。…、だからやたら迷ってなかったんだな。まぁなんであれ、迷いが少しでも晴れたんなら俺様も一安心だよ」
猿飛はおどけたようにそう言って肩をすくめた。真田はそんな猿飛に、柔らかい笑みを浮かべた。
「……佐助。お前には感謝しておる」
「…………へっ?」
「…、こんなみっともない俺と、共にいてくれる事にだ」
「…、あのねぇ真田の大将。俺様はアンタの事をみっともないなんて思ってないぜ?」
「そうか?」
「ま、最近の大将は元気なかったからちょっと心配だったけどね」
「…、そうか」
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