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もうお前を離さない126



「わっ…」
真田は宮野を強く抱き締めた。宮野の顔が真っ赤になる。
「ゆ、ゆゆ、幸村?!どうしたの?」
「…。いや。ただ…こうしていたい」
「…。…うん、分かった」
首元に顔を埋めた真田に、宮野は小さく笑うと、ぎゅうと真田を抱き締め返した。周りはざわざわと騒いでいるが、誰も陣に入ってくる事はない。幸村はそこだけ長い宮野の襟足を手で弄びながら目を細めた。
「とりあえず帰ってこれてよかった…」
「そうだね…。そういえば、どういう所に飛ばされた?私気絶してたのか覚えてないんだよね」
「空に放り出されたぞ」
「…気絶しててよかった私あの落ちる時の浮遊感ちょっと苦手なんだよね…」
「そうなのか?」
宮野も真田の後ろ髪を手で弄びながら、不意に真田を見上げた。
「…、幸村。今の相手は…姉小路?」
「…?!何故分かった!?」
「いや、鎧の色が緑色だったからさ…。…、大丈夫?」
「?」
「武田信玄の事」
「…ッ」
言葉に詰まり体を固くした真田に宮野はぎゅうと真田を抱き締めた。ぽんぽん、と一定のリズムで背を叩く。
「…お館様は……、大丈夫だ」
「…、幸村。覚悟は、した方がいいと思う」
「?!」

「人は死ぬもの。…死なない人間なんていない」

「…ッ」
「どれだけ生きたいと思っても、死ぬ時は死ぬ。…それは絶対の事」
「…」
「ましてやこの時代じゃ栄養バランスも悪い。…70生きれたら長寿…って所だよ」
「…しかし、お館様はっ…」
「…その人の死を否定するのはその人が人じゃないと言ってるのと同じだよ」
「…っ」
「だから。…覚悟はしておいた方がいい。…いつ死ぬか分からないなら」
真田はぐっ、と唇を噛み締めた。
本当ならばお館様が死ぬ事などありえぬと叫びたかった。死ぬ事などないと信じたかった。

だが。
「…お主、は。突然、失ったのであったな…」
真田は叫びそうになる言葉を押し戻し、ただ、そう言った。ぴくり、と宮野の体が跳ねる。
「…………。覚悟が出来ていれば、出来ていないより、苦しくない」
「……そうだな」
今度は逆に、真田がただ強く、宮野を抱き締めた。


 「真田の大将ー…あれ、その子寝ちゃったの?」
「さ、佐助か…。…某はどどどどうすればよいのだぁ?!」
「真田の大将、寝てんだから大声出さないのっ!」
宮野はその後、疲労からか抱きついたまま寝てしまった。真田はそんな宮野を放り出すことも出来ず、寝ているのに解けない腕をどうしようかと途方にくれながら座っていた。宮野の体にはどうにか脱いだらしい真田の上着が掛けられている。
「腕解けないのかい?」
「これがな…」
「…仕方ないね。その態勢じゃ黎凪ちゃん辛いだろうから膝枕にしてあげなよ」
「佐助お主…」
「秤スさその目は」
「……破廉恥ぃぃぃぃ!!」
「狽セから起きちゃうって!!」
「…はっ……。…!!ご、ごめん幸村!また寝てた?!」
真田の叫び声に宮野は目を覚まし、猿飛はやれやれとため息をついた。
「ほらー言わんこっちゃ無い」
「ぬ……」
「なんかすいません…」
「…食事の支度できたぜ。どうする?」
「どうする?」
「いや、兵が二人の仲睦まじい所を見たいとかなんとか言ってるけど」
「破廉恥!!」
「なんで?!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎだした二人を宮野はぽかんとして見ていたが、不意に小さく吹き出した。二人も突然聞こえた笑い声に驚いて宮野を見た。
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