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もうお前を離さない122

一方の猿飛佐助はイライラとしながら真田に駆け寄ってきた。
「大将!!」
「すまぬ佐助、だが話は後だ!」
「ッ!」
真田は思ったより大きく出た声に気圧された猿飛の肩を掴む。
「現状を教えろ、敵将は誰だ?」
「…敵大将は姉小路だよ。今んところ武田は防戦中」
「…そうか。迷惑をかけたな。すまぬ」
「…へっ?」
「お前のおかげで助かった」
「ど…どうした?大将らしくないぜ?」
「とにもかくにも、この戦況を打破せねばならぬ。今小隊はどう布陣しておる?」
「幸村様ーッ!あ、あれ?佐助殿っ?」
大方猿飛は別行動とでも言ってあったのだろう、真田より猿飛を見て兵は混乱していた。猿飛は疲れたように振り返る。
「どうした?」
「…は、はっ!敵小隊が一隊が、西へ進行中でござりまする!」
「西?なんだってあんな所に…あんな崖上に布陣して横から狙うつもりか?」
「…!しまったッ」
「?!」
西といわれそちらを見た真田は顔を青ざめさせた。
そこはまさに、先ほど飛び降りてきた所だったからだ。
猿飛の顔が不審げに歪む。
「…、あそこに何かあるのか?」
「人がおる。女子だ!」
「女…え、女のコ?なんで知ってんのさ?」
「俺が連れてきた!」
「…はぁぁ?!さ、真田の大将が?!女を?!?!」
「幸村様ー!誰かが駈けてまいりまするー!」
「「?!」」
兵の声に2人は同時に西を見た。馬の上で攻防を繰り広げながら、二騎近づいてくる。
片方は途中で落ち、勝った方はそのまま駈けてきた。咄嗟に真田と猿飛は武器を構える。
だが。
「…あっ。幸村ー」
「…。黎凪ぁぁぁ?!」
「馬ってどうやって止めるの?」
「はぁぁ?!」
馬に乗っていたのは宮野だった。そのまま隣を駆け抜ける。
「さっ佐助ぇ!」
「は、はいはいっ!」
真田と猿飛はわたわたとしながらも、猿飛が素早く宮野の後ろに飛び降り手綱を取った。
「わ。あ、ありがとうございます佐助さん」
「いえいえー。…。なんで俺様の名前知ってるの?」
「あ。幸村に聞きました」
「…ふーん?」
「黎凪!無事だったのか?!」
馬を落ち着かせ、猿飛はひょいと宮野を持ち上げると地面に降ろした。そこへ真田が駆け寄ってくる。だが宮野は真田をすぐには見なかった。
「…?黎凪?」
「…あ…、なんでもない」
「…?」
「大丈夫、なんでもない!私は大丈夫だよ」
宮野はそう言って漸く真田を見た。真田は僅かに目を見張る。見たことのない痛々しい笑みを、浮かべていたからだ。
「…、すまぬ、お主は陣にいろ。佐助、行くぞ!」
「ちょっと旦那!あの子何!って、旦那って言っちゃった!」
「えぇい、話は後だ!その女子、よろしくお頼み申す!」
「は、はいっ!」




 なんとか敵を撤退させ、2人は足早に戻ってきた。早急に怪我人の手当てが始まる中、真田は返り血を手で拭いながら宮野を探した。
「!黎凪!」
「!…!!幸…村」
陣幕の外に宮野を見付け、真田は駆け寄った。宮野は真田を見て表情を固くする。
「…?どうした…?」
真田はどうにも様子のおかしい宮野にそっと手を伸ばし、抱き締めた。宮野は真田の戦闘衣についた血に触れた後、顔を胸に押しつけて抱きついた。
真田は自分から抱き締めておきながら、抱きつき返されたことに僅かに赤面した。だが、宮野の体が小刻みに震えている事に気が付き、その頭にそっと手を乗せた。
「……した……私は…ッ」
「?」

「ころし…私……殺した………あの侍…!」

「!!」
真田は漸く宮野の様子がおかしかった理由が分かった。
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