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凶姫と龍人34

その後しばらく雪のなかで遊んでいた二人だったが、室内に戻ってきて、暖炉の前で本を読み始めた。
政宗が一つの単語を指差す。
「たけがたなってなんだ」
「これは、しない、と読む。練習用に竹で出来た刀のことだ。木で出来た木刀というのもある。…そう言えば刀は異国語で何と言うんだ?」
「刀はswordだ。s、w、o、r、d」
政宗は本の上を指でなぞり、アルファベットを書いた。
「そぉど…。……竹は?」
「たけ?…確か、bambooだ。b、a、m、b、o、o」
「…じゃあ、竹刀はばんぶぅそぉどか」
「……。そうなるな」
「…なんだか、すぐ曲がりそうだな、ばんぶぅそぉど…」
「Bamboo sword…」
二人はそう呟くと互いを見合い、ぷ、と小さく噴き出しあった。
くすくすと笑いながらも二人の視線は本に戻る。
「つぅかよ、この話人多すぎねぇか」
「まぁ、平安の終わりだからな…朝廷が絡んでくるとややこしい時代だからな」
「平滋子って誰だっけ?」
「滋子は平清盛の妻時子の妹で、後白河上皇の妻になる」
「…あん?清盛は後白河とはあんまり付き合いたくないんじゃなかったのか?」
「ま、世の中そううまくいかないという話だ。トントン拍子に自分の思う通りに進むわけではない」
「ま、そうだな。それくらいねぇと生き甲斐がねぇ」
政宗は三成の言葉に肩をすくめてにやりと笑うとそう言った。三成はじ、と本から視線を移して政宗を見つめた。
「貴様、思ったより好戦的なのだな」
「あ?そうか?」
「あぁ。会ったばかりの頃はもう少し内向的というか、そんな印象を受けたからな」
「…ま、そうかもな。ずっとこの城に閉じ籠っている事に変わりはねぇからな」
政宗は三成の言葉に苦笑し、自嘲的な笑みを浮かべた。三成はぐ、と拳を握ると政宗に向き直った。
「…貴様に頼みがある」
「なんだ?」
「……ちゃんすが欲しい。最初の夜、貴様は私を晩餐に誘ってくれただろう。また、誘ってくれないか?」
「………。つまり、俺とアンタが晩餐を…?」
政宗は三成の言葉にぽかんとした後、恐る恐るといったようにそう尋ねてきた。三成はこくんと頷く。
「…なんだかんだ朝食を共にしたりはするが、いつも貴様は先に戻ってしまうだろう?その…貴様と、ちゃんと食事がしたい」
「…。……喜んで」
政宗はしばらく目を見開いていたが、ふ、と笑うと薄く目を細めてそう答えた。


 「…政宗様、落ち着きなさいませ」
その後、自室に戻った政宗は色々と動揺していた。返事をしていた時は落ち着いていたと言うのに、だ。
政宗は小十郎の言葉に小十郎を振り返った。
「これが落ち着いていられっかよ!Shit!!情けねぇな、俺!!」
「…一先ず晩餐の前に身なりを整えましょう。髪も少し切らねば」
小十郎は、はぁ、とため息をつくと政宗の手を引っ張り浴室へと連れていった。
 一方の三成は、というと。
「…こんなの…どうかしら…?きっと似合うわ……」
「…う…ふわふわ…」
晩餐会でのドレスを選ばされていた。
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