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凶姫と龍人27

それから一時間後、政宗は三成を呼び出した。三成は長いスカートを揺らして政宗の元に来た。
「よう。スカートに慣れたみてぇだな」
「あぁ…思っていたよりも動きやすいのだな、スカートというのは。だが、落ち着かない事に変わりはない。それより何の用だ」
「あ、あぁ…アンタに見せたいもんがあってよ。ついてきてくれ」
政宗はそう言うと三成に背を向け歩き出した。三成は不思議に思いながらも政宗についていく。
政宗はひとつの部屋の前で立ち止まった。扉を開けようとして、慌てて閉める。
「…目を閉じちゃくれねぇか?アンタを驚かせたいんだ」
「私が驚くようなものなのか?」
「Yes」
「………。ふふん、いいだろう」
三成は政宗の言葉にそう笑うと静かに目を閉じた。政宗は三成が目を閉じているのを確認すると扉を開き、三成の手を取って中に招き入れた。
部屋の中程まで進んだところで立ち止まる。
「Wait a minute」
「?」
「…ちょっと待ってな」
政宗はそう言うと三成の手を離し、窓のところまで駆けていくと、掛かっていたカーテンを一気に開いた。
「!」
眩しさに僅かに三成の肩が跳ねる。ぷるぷると睫毛が震え始めた。
「開けていいか?」
「…OK!開けてみな」
「………!」
三成は静かに目を開き、飛び込んできた風景に息を呑んだ。
三成が連れてこられたのは図書室だった。それも、床から天井まで伸びた壁一面の本棚全てにぎっしり本がつまっている。
三成はぱちぱちとまばたきを繰り返した。1つの窓の前で政宗が満足げに笑っていた。
「…こんな大量の本は見たことがない……」
「…その、気に入ったか?」
「無論だ!」
「そうか。…なら、全部、アンタにやるよ」
「…。えっ?!」
三成は政宗の言葉にやや遅れて驚いたように振り返った。政宗は三成の反応にくすりと笑う。
「……お前が、本が好きだって聞いてよ」
「…。もしや、第五天にか?」
「おぅ。まぁ、なんだ。今までの礼……みてぇなもんだ」
「礼…?礼を言われるようなことは……」
「…だぁー、テメェホント鈍い野郎だな」
「なんだと?!」
不思議そうに首をかしげる三成に政宗は盛大にため息をつき、額に手をあて空を仰いだ。三成はむっとする。
政宗は窓から離れ三成に近寄ると、正面に立った。
「言わなきゃ分からねぇなら言ってやる。テメェの俺に対する態度全部が、俺にとっちゃ救われるもんだった」
「…」
「Are you OK?!」
反応を返さず固まる三成に政宗はむっとしそう怒鳴った。はっ、と三成が我に返る。
「はっ、す、すまん。…、話には聞いていたが、そんなに酷かったのか」
「!………」
政宗は三成の言葉に、僅かに目を見開いた。三成は眉間を寄せる。
「…何故人はそうなのだろうな。違うものは違うもので、いいではないか……」
「………アンタもなんか、あったのか?」
「…少し、な。家康が私を一方的に好くようになってからは、減った」
「…そうか」
「…そんなことより、ありがとう!私は確かに本が好きなんだ。貴様はどうなんだ?」
三成は話題を変え、嬉そうにそう言うと笑いながら政宗を振り返った。
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