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凶姫と龍人14

「…ごちそうさまでした」
「ご丁寧にどうも。で、独眼竜を探しているのだったな」
「そうだ。……流石にもう寝てしまったか?」
「いや、王子は夜は遅いゆえ、案外まだ起きているやもしれぬ。さて、そこで立ち聞きしている長曽我部に同朋」
「げっバレてた」
不意に吉継が扉を振り返りそう言うと、扉の隙間から元親と元就が顔を覗かせた。吉継はぴょんと床に寝ていた官兵衛の上に飛び降りた。
「ぅげふっ!…やっぱりお前さんか!こちとら寝てたんだぞ!」
「大声を出しやるな、ようやく静かになった幸村が起きる。さて、王子探しとゆくぞ。客人が王子に謝りたいそうだ」
「へ?なんで?」
「ヒヒッ、ま、王子は嫌われておらなんだ、という話よ」
吉継が笑いながら言った言葉に、元就は目を細め、ふふんと楽しそうに笑った。
「…なるほどな。貴様、名はなんと申す」
「あ…石田三成だ」
「よし。では我は南を、長曽我部は北を、大谷達は東を、石田貴様は西を探せ。別れればそれだけ早く見つかろう」
「おぅ!」
元就の指示のもと、それぞれの方角へと姿を消した。三成も一人西の方角へ向かう。月明かりが照らす階段を静かに上がった。

 「……あ」
それから30分後、東の部屋を探していた吉継が不意に声をあげた。官兵衛が尻尾を一回振る。
「なんじゃ、どうした」
「…王子、確かあれに西の外れの部屋、王子の自室には来るなと言うておらなんだか」
「…そういや言ってたな」
そう言って少し進んだ後、ぴたりと官兵衛の足が止まった。
「……。西探しに行ったのあの嬢ちゃんじゃないか!」
「急げ暗!王子のアホは部屋の場所を言っておらぬ!」
官兵衛はくるくると何度か回った後、今まで歩いてきた方向に走り出した。
「おいアホっておま、じゃない、だったら鉄球外してくれんかね!」
「よいよくないの前にこの姿では外せぬわ!暗の力で急ぎや!」
「あぁもうはいはい!」
二人はぎゃあぎゃあ言いながら急いで三成がいるであろう反対の方向へ向かった。
 ちょうどその時、三成はある1つの部屋の前にいた。ノックを何度かするが、反応はない。だが、ノブに手をかけると簡単に開いた。
「…伊達政宗!いないのか?」
声をかけても反応はない。だがどことなく、三成は妙な気配を感じた。
三成は部屋の中に入った。
「……荒れているな…」
三成はそう呟きながら、部屋の奥へ進んだ。窓が開いているらしい、風が吹き込んでくる。
「…!」
不意に視界が開けた時、三成の目に窓際の机に置かれた、赤い光を纏うバラが入った。
「…綺麗な薔薇だ…」
三成はその薔薇に近寄り、バラの入ったケースに触れた。
「…?このバラどうなっている。鉢にも入っていない」
そう呟いた時、ふっ、と目の前に影が射した。
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