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凶姫と龍人32

「…伊達」
「……おぅ」
「…今、こうして握っているのも、怖いか?」
「……いや…案外平気だ。アンタは、結構平気なんだよ、ただ、流石に直となると、な。悪かったな」
「もう謝るな。貴様が謝罪すべきことなどない」
三成はそう言うと片手を離し、わしゃ、と政宗の頭を撫でた。政宗はきょとんと三成を見る。
三成はじ、と政宗の目を見つめたまま撫で続けた。
「…落ち着いたか?」
「…。ぶはっ!」
「?!」
三成の言葉に政宗は勢いよく噴き出した。三成はびっくりしたように頭から手を離した。
「は、はははっ…アンタ、本当におもしれぇ奴だな」
「?よく分からんが、大丈夫そうだな」
「…あぁ、大丈夫だ。ありがとよ」
「…。礼には及ばん」
嬉しそうに政宗は笑ってそう言った。三成はその政宗の笑みにわずかに顔を赤らめた後、少し顔をそらしてそう返した。

 「よう王子!」
「!なんだ、テメェか」
それから少しして、政宗と三成は別れ、政宗は自室に戻ってきた。待ち伏せしていたらしい元親が、元就とともに駆けてきた。
「如何であった」
「んだよ、アンタもいたのか」
「で、どうだったのだ」
「…。別に……」
政宗は二人から顔をそらし、ぼつりと呟いた。元親と元就はどこかつまらなそうに顔を見合わせたが、その場にちょうど訪れた小十郎は政宗の顔を見て、薄く笑みを浮かべた。
「何やらよきことがあったようですな、政宗様」
「!なにっ」
「…小十郎…言うんじゃねぇよ……」
「隠すつもりであったか王子よ」
「いや、隠すとかそういうつもりはねぇ。…、アイツ、思ってたより、いい奴だった、って話だ」
そう言った政宗の顔は僅かに赤かった。元親と元就は思わず顔を見合わせ、小十郎は珍しく、くっくと喉を鳴らして笑った。
「惚れたならば惚れたと、素直に仰いませ」
「なっ!て、テメ、小十郎!!」
「おぉ?!惚れたのか?!」
「…!うるせぇ!」
政宗はぱくぱくと口を開閉して混乱しながら、顔を真っ赤にしてそう怒鳴り、部屋に逃げ込んでしまった。
勢いよく閉まったドアに元親の火が消えたが、元親はにやにやと笑った。
「王子は惚れたぜ!もしかしたら、俺たち人間に戻れるかもしれねぇ!」
「そう簡単にはいくまい。石田も惚れねば意味はないのだぞ」
「まぁ、そうだけどよ!希望が見えてきたじゃねぇか!!」
「…だが、それはいいとしても、時間はあまり残されてねぇ」
興奮する元親だったが、小十郎の言葉にはっと小十郎を振り返った。
小十郎は腕を組み、考え込む様子を見せた後、二人を振り返った。
「…こうなったら形振り構ってはいられねぇ。俺たちでも動くぞ!」
「!待ってましたァ!」
「ふん、なかなかに面白そうだな」
「そうと決まりゃ、早速軍議だ」
三人は同時に頷き合うと、全速力で厨房に向かって走っていった。
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