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凶姫と龍人19

「ごちそうさまでした」
「…んな少なくていいのか?」
「少食だからな」
「…いくらなんでも少なくねぇか……?」
「そうだな、よく言われる」
三成はそう言うと肩をすくめた。面食らった政宗も、すぐににやと笑った。
「…なぁ、この城には体を動かせる場所はあるか?」
「Ah?…あることにはあるぜ、小十郎」
「はっ」
「案内してやんな。俺は部屋に戻る」
「御意。…石田、ついてこい」
「あ、あぁ」
三成はあっさり部屋に戻ってしまった政宗に少しばかり落胆しながらも小十郎の後についていった。そのあとを幸村が追っていった。
久秀の隣にいた吉継はからからと笑う。
「…何やら面白き事になってきよったなぁ」
「はは、確かにな」

 「ここだ。好きに使え。あぁ、運動着になりそうなのはそこの棚に入ってる」
「…時計!」
「片倉だ」
案内がすむとさっさと去ろうとした小十郎を三成は慌てて呼び止める。小十郎は表情を変えないまま振り返った。
「なんだ」
「…私は伊達を怒らせてしまったか?」
「なぜそう思う」
「…なんとなくだ」
小十郎は三成をじ、と見たあと、ふ、と薄く笑った。
「…この際話しちまった方が良さそうだな。あの方はあの姿になってから女子に会うのは、実はアンタが初めてでな」
「そうなのか?」
「政宗様を拒絶しなかった人間もアンタが初めてだ。だから戸惑っておられるのだろう。無愛想なのはもとからだ」
「…何故あんな姿になってしまったんだ?」
「……それは言えねぇな」
「政宗殿が魔女を魔女と知らず邪険に扱ってしまったからでござるよ」
「ばっ、真田テメェいつから!」
言い淀んだ小十郎だったが、後をついてきていた幸村があっさり暴露してしまった。小十郎は幸村に頭突きを食らわせ、はぁ、とため息をついた。
「…つまりは、奴の人間性に問題があった、ということか?」
「……簡単に言えばそういう事だ……。それは俺達にも責任がある、だから幻滅しないでくれ」
「魔女と知らず、と言ったな。それは、どういう事だ?」
「…それがまた、醜い老婆でな」
小十郎の言葉に、三成はわずかの間目を伏せた後、小十郎を見据えた。
「確かに、人を外見で判断するのはよいことではない。だが、初対面の印象というのは、目が見えている限り、ほぼ外見で決まる。伊達の人となりが全て悪いわけではないと思うぞ」
「……は…?」
「…要するに、私はそのような事で幻滅などしない。誰にでも起こりうる過ちだ」
「……」
小十郎は目を真ん丸にして三成を見上げた後、ふ、とどこか嬉しそうに笑った。
「…、ありがとうよ」
「?」
「それじゃあな。真田、テメェはここに残れ。何かあったら真田に言え、こいつの声は城中に届く」
「御意!」
「分かった」
小十郎はそう言って幸村を残し、部屋を出ていった。
三成は小十郎に言われた棚から出したパンツとシャツに着替えると、刀を腰に構えた。
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