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凶姫と龍人16

「な、え、な…ッ?!」
三成は色々なことに混乱してパニックになる。自分に覆い被さるようにして狼と対峙している政宗を見上げ、思った。何故政宗がいるのか、そして何故自分を庇ったのか。
政宗は腕に噛みついた狼の頭を反対の手でがし、と掴んだ。ばちばちっ、と音がして雷がはぜたと思ったら、政宗の手から多量の雷が放電された。
「ぅわっ…!」
その眩しさに三成は咄嗟に目を閉じる。
政宗は雷で黒こげになった狼を三成から離れた場所に放り投げた。仲間が一匹やられたにも関わらず、狼は逃げない。
「だ、伊達!なぜ私を…」
「…」
政宗は答えずに地面を蹴り、狼の群れに突っ込んだ。一斉に狼が飛びかかってくる。
政宗は体全体に雷を纏った。その為か三成には伊達が僅かに青く光っているようにも見える。
触れるそばから感電し、狼達は弾かれていく。それでも牙は政宗の肌を抉り、爪は傷をつけた。白い雪に鮮血が飛び散る。
小さく舌打ちした政宗は何匹かの狼を同じ方向に蹴り飛ばすと、右腕を肩の上に構えた。右手が際立って光り、拳に雷玉が発生する。
「Hell dragon!!」
言葉と共に思いきり右手を前につき出すと、拳の動きにあわせて雷玉が狼のところへ飛んでいった。雷玉に衝突した狼は、最初の狼のように黒こげになって倒れた。
狼はまだ逃げない。寧ろ、技を放った事で僅かに政宗が纏う雷が減ったのを好機とばかりに飛びかかってきた。
政宗は無感動な目で飛びかかってくる狼達を見据え、一匹一匹投げ飛ばした。その攻防を繰り返し、何匹かを容赦なく木に叩きつけると、それらはぴくりとも動かなくなり、ようやく狼達は逃げていった。
「だ……伊達?」
三成が恐る恐る問い掛ける。政宗はちらり、と三成を振り返った。
「…どうして、私を……」
「…知らね」
「し、知らないっ?!なんだそれ…は……?!」
何故助けたのか、そう尋ねたのに知らないと答えた政宗に三成が反論しようとした時、政宗がばたりとその場に倒れた。
三成はぎょっとして政宗に駆け寄った。息は僅かに荒く、最初に噛まれた傷口からは絶え間なく血が流れていて、雪がどんどん血に染まっていた。
「…………」
三成は、ぐ、と拳を握りしめた。


 「…帰ってこねぇなぁ……」
「…何事もなけりゃいいん「刑部ぅぅぅぅぅ!」
小十郎が呟いた時、城に三成の大声が響き渡った。皆その声の大きさに飛び上がる。
「あ、あやつかっ?!」
「幸村ぁぁぁぁ!官兵衛ぇぇぇ!タンスのお市ぃぃぃ!」
「三成殿ぉぉぉぉぉぉぉ!」
「しまった、幸村が起きやった!」
どうやら手当たり次第に知っている名前を呼んでいるらしい、そしてその声に反応したらしい幸村の大声も聞こえ、吉継達は急いで玄関に向かった。
「なんと!政宗殿ぉぉぉぉぉぉぉ!」
「三成!主、帰って…」
「ままま政宗様ぁぁ?!」
「お、落ち着け片倉!貴様が狂っては収集が着かぬ!」
三成は天君に政宗を乗せて、城に戻ってきた。

 「…………」
少しして、政宗は意識を取り戻した。だが、三成の方を向こうとしない。
「…傷を見せろ。手当てする」
「………いい」
「政宗様、駄々を捏ねられまするな。大谷の薬湯は確かに滲みまするが効果は強いのですから」
「Hey小十郎、俺が大谷の薬湯がいてぇから嫌がってるみたいな言い方は止めろ」
「おや、違いましたか」
「ガキの頃の話を出すんじゃねぇ!」
「うるさい!どうでもいいから腕を寄越せ!」
「いってぇぇぇ!」
三成は政宗の腕に大谷が用意した薬湯に浸した布巾を押し付けた。
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