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凶姫と龍人22

「昨日の話、教えてくれないか」
「…僕は君には頼まない、そう言ったと思うんだけど」
「頼む!ワシだって三成を助けたいんだ!」
「…………この際はっきり言うとね。あれから考え直してみたんだが、君が行くと逆効果なような気もしているんだよ」
「え?」
半兵衛はカップを両手にもって肘をついた。
「…彼は自分の姿を見られることを嫌っている。君は容姿は悪くないからね。その上三成君の知り合いとなると、何をしでかすか……」
「喧嘩には自信があるぞ?」
「放電する相手でもかい?」
「放電ッ?!」
「バチバチ光ってたからね。それに、三成君が気配を探ることができなかった相手だ、君が喧嘩してきたような弱い相手とは違うよ」
半兵衛の言葉に思わず家康はポカンとしてしまうが、はっ、と我に帰ると勢いよく立ち上がった。
「そんな男のところに三成が一人なんて、いくらなんでも危険すぎる!!」
「分かってるよ」
「じゃあなんで戻ってきたんだ?!」
家康の言葉に半兵衛は僅かに目を伏せた。ぎち、と握ったカップが小さく音をたてる。
「……三成君に、まだ失いたくないと言われたら、従うしかないだろう」
「…!」
家康は、はっ、となり、少ししてから静かに腰を下ろした。半兵衛は深々とため息をつく。
「…僕が病弱じゃなければ……いや、言っても無駄だね……」
「……。半兵衛殿」
「昨夜は錯乱していたからね…君が行った所で何も変わらない。帰ってくれ」
「!!諦めるのか?!」
「帰ってくれと言っているんだ」
半兵衛は詰め寄る家康を振り返ると、冷めた眼差しで家康を見据えた。家康は滅多に見ない半兵衛の怒った顔に気圧され、ぐ、と拳を作ると家を出た。
「…それに君は信用できないんだよ、徳川家康君」
半兵衛は誰もいなくなった部屋でそう呟いた。
「……そんなの間違ってる」
家を出た家康は一人そう呟いた。その瞳には僅かに怒りが宿っている。
「…ワシは許さないぞ、半兵衛殿…!最上!」
「呼んだかね家康君!」
「森へ出掛けるぞ!忠勝!」
家康はそう言うと愛馬忠勝に跨がった。

 その夜。
「ご馳走様でした。……伊達は、来ないな」
一人食卓についた三成はそう呟いた。奥で久秀がくっくと笑う。
「ま、彼は普段二食しか食べていないようなものだからな。その内腹が減ったら来るだろう」
「…私の少食も問題だと思うが…あまり夜遅くに食べない方がいいのではないのか?」
「夜は元々そんなに食べない方だから大丈夫だろう」
久秀の言葉に三成はそうか、と呟くと窓から外を見た。雪が静かに降り続いている。
「今宵もよく降りまするなぁ」
「そうよな」
「三成殿!熱い茶でも!」
「…沸騰させるなよ?」
「うむ!承知いたした!」
幸村の提案に三成が小さく笑った時、どん、という音が窓の外からした。三成は驚いて窓を振り返る。
窓の外に、特徴的な体が見えた。三成はぎょっとして窓を開けた。
「伊達!何をしている、ここ高いぞ?!」
窓の外にいたのは政宗だった。ベランダもない窓の縁に、片足をかけて立っている。
それには吉継も驚いたように政宗を見た。
「何をしておるのよ」
「…石田、部屋にもどれ。何が聞こえても部屋から出るな!」
「?!」
政宗は鋭くそう言うなり窓から飛び降りてしまった。
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