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凶姫と龍人13

「ほう?私は常通りだが」
「もうよいわ、一先ず爆破はやめておけ、客人が起きよう」
「ははは、その客人が食べないからこうなったのではないか」
「…む…まぁ、そうだがなァ」
かまどはぱたぱたと蓋を開けては閉め、遊んでいるかのようだ。 吉継は時たま妙に子供っぽくなる久秀にやれやれと呟いた。
その時、きぃ、と音がして厨房の扉が開いた。
「あれっ?」
「!主、何ゆえここに」
「!刑部」
扉を開いたのは三成だった。厨房を覗いて首を傾げ、吉継に気がつくとしゃがんだ。
三成に刑部と呼ばれたことに、吉継は笑いながら体を揺らした。
「ヒヒッ、まさかそちらで呼ぶとはなァ」
「!す、すまない、呼びやすくてつい……」
「何、気にしやるな。で、如何した。腹でも空いたか」
吉継がそう尋ねると三成は申し訳なさそうに首を横に振った。
「音がしたから…奴がいるかと思って」
「奴…?」
「独眼竜の事かね?」
「?!ど、どこだ!?」
「私だよ」
会話に突如割り込んだ久秀に三成はぎょっとしたように辺りを見回し、それがかまどからの声だと判断すると驚いたように目を見開いた。
「…ど、独眼竜?」
「この城の王子の事だ。名は伊達政宗。今は龍のような皮膚だろう?おまけに彼は今の姿に変わったとき右目を失っていてね、それをもじって呼んでいるのだよ」
「…そういえばタンスの市というのもそう言っていたな……。伊達政宗というのが名なのか」
「その通りだ。彼は名乗ってすらいないのかね。まぁいい、で、卿は何故独眼竜を探しているのかね」
久秀がそう言うと三成は気まずげにわずかに目をそらした。
「…私は奴の…伊達の晩餐への招待を断ったのだが……それは奴と食事がしたくないとか、そういうわけではなくて」
「そうだったのか?」
意外そうにそう言った吉継に三成は小さくなり、頭を抱えた。
「単に私は食えないだけなんだ…だが誤解しているだろうと言われて……やはり謝りに行こうと思ってだな……」
「…腹がすかない?あり得ないな」
「?」
三成の言葉に久秀がそう呟いた。不思議そうに己を見る三成に、久秀はぱたぱたと、蓋を開けては閉めた。
「卿は麓の村から来たのだろう?あの村はここからでは近道を使っても二時間はかかる。初めて来る者が迷い迷い来れば、倍はかかるだろう。卿が来たのは八つ時、つまり3時頃。今はもう日を跨いでいる、いくらなんでもおかしいと思うのだがね」
「…私は少食なのだ」
「少食、なァ……」
「食事は朝昼晩、2:2:1の割合で食べるのが最も体によいのだ。少しでも食べたまえ。1日一食では栄養が足りんよ」
久秀はそう言いながら1つの鍋の蓋を開け、側にあった器に中身を移した。
「食べたまえ。何、深夜だろうと問題ないよ」
「………」
「前菜用のスープだ。腹にたまるようなものではない。ま、食べないと言うのなら捨てるだけだ、返したまえ」
「!た、食べ物を粗末にできるか!…食べる!」
三成は久秀の言葉に、慌てたようにスープの入ったカップを口元に運んだ。久秀は満足げに蓋を閉じる。
「…!おいしい」
「それは結構だ」
「今度作り方を教えてくれないか?」
「構わんよ。暇な身分だからな」
久秀は三成の申し出に一瞬意外そうにしながらも、楽しそうにそう答えた。
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