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凶姫と龍人21

「…これは…変わった味がするな」
数分後、戻ってきた三成は、幸村を手にそう呟いた。走り疲れたためか、幸村は大人しい。
官兵衛はぐったりとして床にのびながら、吉継の方を見た。
「作るとこ見てたが、それ経口補水液だろ。小生にもくれ」
「ほれ」
「そこは尻じゃっ!反対だ反対!」
「経口…?」
尻尾の方に水をかけられた官兵衛は冷たさに思わず走り回ったが、三成が呟いた言葉に三成を振り返った。
「ま、平たく言えば人体に一番いい水だ。下痢だとかで体に水分が足りん時に、飲むのもいいな。塩と砂糖を溶かしただけだが、電解質で運動で失われたナトリウムを摂取するにゃ、ちょうどいいか」
「……官兵衛、貴様博識だな…」
「何じゃ!これでも小生は知性派だぞ!」
「全くそうには見えなかった」
「何故じゃ!」
「主の素行に左様な兆候がない故であろ」
「誰のせいじゃ!」
官兵衛は三成の言葉に落胆を見せた後、吉継の言葉に吉継に飛びかかったが、敢えなく避けられた。べちゃっ、と地面に衝突し、何故じゃー、と小さく呟く。
三成はそんな官兵衛に苦笑しながら幸村を床に下ろした。幸村はまだふらふらしていた。
「…半兵衛様も化学が得意なお方でな。きっと気が合うだろう」
「…そうかい」
「主、家族はあの男だけか?」
「あぁ。親は顔すら知らない」
「…そうであったか。気の毒な事をしたな」
「……いや、構わない。受け入れたのは私だ」
「「……………」」
吉継と官兵衛は何とも言えず、顔を見合わせただけだった。


 「…おかしい」
「?どうしたのかね家康君」
「三成がいない。半兵衛殿の話はやはり本当だったんだ」
同じ頃、家康は小高い丘から三成と半兵衛の家を見下ろしていた。ふむ、と腰と顎に手を当てて考え込む。
「お前が余計なことを言わなければ、もう少し詳しいことが聞けたんだがな」
「…怒っているのかね家康君」
「別に。ワシが本当に怒ったらお前顔が変わるぞ、ははは!」
「…笑顔で恐ろしいことを言わないでくれたまえよ」
最上は素早く後退り家康から離れた。家康は気にする事なく家を見下ろす。
「…もう一度聞いてみるか。最上、ついてきてくれるなよ?」
家康はにっこり笑ってそう言うと、家に向かって歩き出した。あまりにその笑顔が怖かったので、最上はついていけなかったのだった。
 「半兵衛殿!ワシだ!」
「……何の用だい?」
家康か扉を叩きそう告げると、案外あっさり半兵衛は出てきた。不愉快そうな表情を隠そうとはしていなかったが。
家康はまず、頭を下げた。
「先日はすまなかった。ワシは三成が心配だったんだ。秀吉公も半兵衛殿もいないとなると、誰かが何かしでかしても不思議じゃない」
「僕個人の意見としてはその誰かに君も入っているんだけどね。まぁいい、あがりたまえ」
「ワシは心配だっただけで、プロポーズなんかしていないんだ。お邪魔します」
半兵衛は小さくため息をつくと家康を招き入れた。家康も素直に従い、半兵衛に促されて食卓の椅子に座った。
「それで?何しにきたんだい」
半兵衛は家康の前にカップを置き、家康の向かいに座った。
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