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凶姫と龍人12

「何を言っているのかね!貴公の妹の山下君は家康君のプロポーズをすげなく振ったのだよ!それを今更助けろとは都合がよすぎるのではないのかね!」
だが家康が近寄る前に最上がずいと前に出た。半兵衛は視線を家康から最上に移し、にっこりと笑った。
「やぁ名前を覚えられない最上君。君には話していないんだ、この世から消え失せてくれるかな?」
「笑顔でそういうことを言うのはやめたまえよ!」
「…それより聞き捨てならないな。三成君にプロポーズしたって?僕がいないと知っていながら?」
半兵衛は最上の反論を無視して家康に視線を戻し、笑ったまま、しかし目は笑っていないままそう尋ねた。家康の顔が僅かに青くなる。
「いや、別にあれはプロポーズじゃなくて……」
「いいや、あれはプロポーズだよ!何を物怖じしているのかね?!」
「あぁもう黙ってくれないか最上!?」
「……君に少しでも期待した僕の目が狂っていたようだ。頭を冷やすとしよう、もういいよ家康君。君には頼まない」
「!」
半兵衛は冷たくそう言い放つと家康に背を向け、笑ってくる男たちには見向きもしないまま居酒屋を出ていった。
家康は思わず半兵衛に向かって手を伸ばしたが、すぐに下ろし、キョトンとしている最上に向き直ると思いきりその顔を殴り飛ばしたのだった。

 深夜。
「貴様ちゃんと仕事をせよ」
「やってんじゃねぇかよ。いーじゃねぇかちょっとくらい」
「貴様忘れたのか。我は前回火傷したぞ」
「気ぃーつけっからよ。な、いいだろ?」
「……致し方あるまい」
「んだよその言い方。なんだかんだアンタも乗り気なんだろ?」
城の中で、元親が恋人の羽箒といちゃいちゃしていた。羽箒は元親の言葉にむっとしたように元親を見、ぺしんと羽で叩いた。
「いって!何すんだよ元就!」
「気が虚ろなのは貴様だろう。何ぞ、また貴様のほっとけない魂に火が点いたか」
「!……いや、それは…よ………。……はい、点きましたー」
「確かにこの女子、そろそろ空腹に耐えかねて出てくるかと思ったが出てこないな」
そう言って羽箒、毛利元就は扉を見上げた。部屋からは物音があまりしない。
元親は元就の隣に立った。
「…どうすっかなぁ……いざってときはお市さんが放り出してくれっだろうけどよ」
「しっ」
元親がぶつぶつと呟いた時、ドアノブが動いたのに気がついた元就はドアの前から元親を引きずりつつ離れた。
小さな音を立てて、扉が開く。中から刀を持っていない三成が出てきた。
「出た!」
三成は元親たちには気がつかないまま歩き出した。
「…追っかけるか!」
「そうだな」
元親と元就は三成の後を追った。
 「義父上〜…某眠くのうござる……」
「そう言うて船をこいでるのはどこのどやつよ」
「うー……」
「ははは、些末、些末」
「…主は思うたよりもご機嫌よな」
うとうとと船をこぐ幸村を吉継が食器棚へ追いやった時、楽しそうにそう言う声が聞こえ、吉継はそちらを振り返った。
声をあげたのはかまどだ。かまどは自分の上にある鍋の蓋を開けた。
「卿は私が不機嫌になるとでも思っていたのかね?」
「さぁてなァ。主は掴めぬゆえ」
「何、料理が無駄になる事など些末なことだ。さて、どれから爆破してやろうか」
「前言撤回よ、やはり主不機嫌ではないか」
楽しそうに笑っているかまど、料理長の松永久秀に、吉継はそう言ってため息をついた。
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