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凶姫と龍人23

「何事だ?!」
「さてな。客ではないようさなァ。戻りやるか三成」
「…だが……」
「王子はそこそこやりおるのは知ってるであろ?」
「……あぁ…そうだな」
三成は大人しく政宗の言葉に従った。

 「…城…ここだな」
「家康君…こんな所に何をしに来たんだね?」
「昨日半兵衛殿が言っておられた事だ」
「………。佐藤君が閉じ込められているというのを真に受けているのかねっ?!」
「石田三成な。…見ろ、早速お出ましのようだぞ」
森を熟知する家康はこの城を見かけたこともあった。城門の前まで来ると、上階から何かが出てきた様子が伺えた。
家康は馬から降り、被っていたフードを外した。
「ワシの名前は徳川家康!お前は誰だ?」
家康は声を張り上げ、城と城門の間に一人立っている政宗にそう尋ねた。家康からは政宗は寒々しい格好をして立っている男にしか見えておらず、政宗の特徴的な肌は視認できていない。
政宗は答えず、ただ家康を見据えた。
「ワシの友人、石田三成を幽閉しているというのはお前か?」
「……………」
「何故そんなことをする。それにお前は初めて見る顔だ。どうしてこの城から出ないんだ?」
「……………」
「……そうか。お前がそのつもりなら、ワシはここでお前が話すまで話し続けよう。ワシはお前と話もしたい」
家康はそう言うと人懐こい笑みを浮かべた。政宗の顔が苛立ちに歪む。
「Get back!!失せな」
「!!」
ようやく口を開いたと思ったら強い口調で怒鳴られ、家康は驚いたように政宗を見た。
「前触れ無しに訪れたと思ったら訳の分からねぇ事をほざきやがって。そんな野郎はウチにはいねぇ、帰りな」
「…?!そんなはずなはない、この森にある城はここだけだ。それに、忠勝が三成の馬の天君に気がついている。嘘をつくな」
「!」
政宗は意外そうに家康を見、向き直った。
「誰に聞いてここに来た。…いや、あのネコ毛の男だな」
「何故三成を閉じ込めるんだ」
「Ha!不法侵入の罪を背負ってアイツが残ってるだけだ。テメェには関係ねぇ」
「不法侵入…?半兵衛殿がか?」
「…このように荒れた城では、無人の城と勘違いしてもおかしくはないと思うがねぇ…」
最上は誰ともなしにぽつりと呟いた。運よく政宗の耳には届かなかったようだ。
「三成はワシの大切な友人だ!閉じ込めないでくれ。そしてお前も出てこい!ワシ達と絆を結ぼう!」
「…絆、だと?」
「そうだ!」
「……くっだらねぇ」
「!!」
政宗は呆れたように鼻を鳴らし、肩を竦めた。家康は思わず門に近寄り、がしりと門をつかんだ。
「何がくだらないんだ。絆は人と人とを繋ぐ糸だ」
「その通りだ。義理人情で人を動けなくさせる、な」
「!ワシはそんなつもりで言ったんじゃ、」
「俺は馴れ合うつもりはねぇ。石田を返すつもりもねぇ。どういうことか分かるな?」
「……交渉の余地はない、と言いたいのか」
「That's right. 分かったらとっとと失せな」
政宗はそれだけ言うと家康に背を向け、城の中に姿を消してしまった。
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