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凶姫と龍人26

じ、と己を見つめる三成に小十郎は頭を抱えた。
「…政宗様はな、おめぇがするように接せられた事が久しくねぇんだよ。これで理解しな。西海!テメェは面貸せや」
「…ちょキレすぎだっていだだだ!」
小十郎は素っ気なくそう言うと元親の首根っこを掴んで部屋を出ていってしまった。三成は困ったように首をかしげる。
「…つまりどういうことだ?」
「三成殿!きっと政宗殿は、嬉しかったのだと思いまする!」
「うれしい……?」
「三成殿は、政宗殿の事を思って下さっておるでござろう?だからでござる!某達とは違う、ただの人である三成殿に、思うていただけた事が、嬉しかったのだと!」
「!……わ、私は…」
三成は僅かに顔を赤らめた。幸村はきょとんと首をかしげ、間違っておりまするか?と吉継を振り返った。
「ま、竜の右目もああ言うておる、あながち外れではなかろ」
「!!!!え、あ、う…」
「成り立ての頃は今よりも人が来ることが多くてな。皆悲鳴をあげて逃げたのよ。中には石やら何やら投げつける者もおってなァ」
「!」
吉継の言葉に、三成ははっとしたように吉継を見た。
「それ以来ずっとヒトと触れ合う事を恐れておったし、それから訪れる者も皆王子を恐れておった」
「…なぜ石やら何やら投げつけるなどということを……?」
「己と異なるものを嫌うはヒトの理よ」
「……!そんな」
「だから主は王子にとっては変わり者よ。喜ばしい、な」
「……!」
三成は政宗が逃げ去った方向に視線を向けた。きゅ、と拳を作る。
「……そうか」
そしてそう、小さく呟いた。

 それから、1週間が経った。三成は午前は体を動かすか部屋で何かしていて、午後は天君を庭で散歩させていた。念のために、とついてきている官兵衛が木の下を通るたび、官兵衛の上に雪が落ち、官兵衛は何故じゃと騒いだ。
「…貴様本当に運がないな……」
「じゃかあっしい!小生のせいじゃないぞ!ぶべっ!」
「…もう木の下を通るな貴様」
なんとも微笑ましいその様子を、政宗は自室のベランダから見下ろしていた。ふ、と小さく笑みを浮かべる。
「もう1週間経ったな。あいつ、逃げ出さねぇ」
「来たばかりの時、確か裏切りが嫌いだと言っており申したな。真面目なのでしょう」
「…あいつに何か、返してぇな」
「ぷれぜんと、って奴か?!」
「…だけど何やりゃいいんだ?」
政宗はそう言うとぶす、と頬杖をついた。うーん、と唸って珍しく考え込んでいる。
傍にいた元親も腕を組んだ。だがその額には大きなたんこぶが残っていて、政宗が逃げ去った時の元親の態度への、小十郎の怒りがうかがえる。
「…そもそもあいつは何が好きなんだ?」
「知らねぇよ、流石に」
「……あの者は時折部屋に閉じこもっておりまする。同じ部屋のお市ならば何か、知っておるのでは」
「…そうだな…」
政宗は体を起こすと、三成に宛がった部屋に向かった。
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