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凶姫と龍人28

政宗は三成の言葉に僅かに視線をそらした。
「…読まねぇ」
「?何故だ」
「…読めねぇんだよ」
「!読み書きを習わなかったのか?」
驚いたように自分を見る三成に政宗はぶす、と不貞腐れた。
「…習うことには習ったが、昔すぎて覚えてぇんだよ」
「……。…なら私が教えてやる!」
「…はっ?!」
三成はに、と笑うと政宗の手をつかんだ。政宗は驚き、ぽかんとしている間に三成に引かれて本棚に近寄る。
「本は面白いぞ。様々な人間の考え方を読み取ることができるし、そこに差別はない」
「!」
「貴様はどのような物が好みだ?」
「好み?」
本棚の前に立ち、振り返った三成の言葉に政宗は首をかしげた。三成は知っている本があったか、背表紙をとんとんと叩いた。
「人の恋愛沙汰か、架空の物語か、歴史か、勉学か、まぁそんな感じだ。何か好みはあるか?」
「……歴史」
「歴史か!私も歴史は好きだぞ。ならば話は早い、私が好きなのはこの本だ」
三成は政宗の答えにどこか嬉しそうにそう言うと、城に来る前から読んでいた本を抜き出した。運良くこの城にもあったようだ。
三成は政宗の手を引き、図書室にあったソファに座った。
「どんな話なんだ?」
「これは、昔の人間の様々な格言や逸話が載っている本だ」
三成は政宗に本を開いて見せる。政宗はしばらく文字を眺めていたが、諦めたように首を横に振った。
「…読めねぇな」
「大丈夫だ、読めるようになる。一番最初の話は、今から200年程前に、東国を治めていた者の話だ」
三成はそう言って、本を読み始めた。

図書室の外で様子を伺っていた元親は二人の様子に食堂にかけ戻ってきた。
「!!どうだった」
「成功だ、成功!今、二人並んで座って本読んでる!!」
「はっ破廉恥なぁぁぁぁぁぁああ!」
そう叫んだ幸村に、元親はがくんと頭を垂れた。小十郎もやれやれとため息をつく。
「…なんでだよ」
「……大谷、いくらなんでも箱入りに育てすぎだ」
「はて、我は急に耳が遠くなった」
「まぁ、今さら言いなさんなや、育っちまったもんはどうにもならん。寧ろエロガキに育つよりは遥かにマシだろ」
「貴様が大谷に味方するとは珍しいな、黒田」
「別に味方してる訳じゃないぞ。幸村は悪い奴じゃないって話だ」
「…?某悪い子でござるか…?」
官兵衛の言葉に幸村ははっと我に返り、しょぼんと頭を垂れた。今にも泣き出しそうな幸村に小十郎と元親は僅かに青ざめる。
大谷がぽふぽふと包帯の先で幸村を撫でた。
「主は良い子よ、ヨイコ。悪い子ではないゆえ、泣きやるな。主は強き男子であろ?男子たるもの、泣かぬものよ」
「むっ…はい!」
「……なんでだろうな、ダメだと思いつつも野郎の涙にゃ敵わねぇ…」
「それ、同感だ……」
「相変わらず貴様は子供をあやすのが得意だな、大谷」
「ヒヒッ。…まぁ、伊達に父親はしておらぬわ」
大谷はそう言うとヒッヒと笑い声をあげたのだった。
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