2011-8-25 18:27
「…胸騒ぎがしたとも言っていたな」
「…はい………」
「…、どちらにせよ、船の上ではどうしようもない。四国に着くまで耐えろ」
「…そうですね。無事を信じて待つ事にします」
村越はそう言うと小さく笑い立ち上がった。
「何か欲しいものありますか?というより三成さん、具足脱いだらどうです?」
「何もいらん。…、いや、脱ぐのを手伝え」
石田はそう言いながら小手の防具を外した。村越は再び腰を下ろして腕の防具を外すのを手伝った。
「…、船酔いなら寝て乗り過ごしたらどうでしょう?」
「…そう簡単に眠れるか」
「そうですか?…、よしと。何かあったら呼んでください、私外にいますから」
「……………」
そう言った村越に石田は暫く黙った。鎧を全て取り終わった時、石田は村越を見上げ、言った。
「…貴様と話していたら気が紛れたか少し楽になった。中にいて話相手になれ」
「!!本当ですか!?じゃあじゃあ、何の話します?」
ぱっと表情を明るくした村越は嬉々とした様子で石田の枕元に座った。石田はぼすんと横になる。
「貴様の好きにしろ」
「えっ!…じゃあ、しりとりしませんか?!」
「ふん…いいだろう」
「…では、何からにします?あ、大谷さんのぶ、からにしましょう!」
「…貴様の言葉の選び方は相変わらず分からん。…、武器」
「き…気合い!」
「…真田のような事を言うな」
「あ…そうですね。ははっ」
「い、か…。…雷」
「ち…地図」
「頭蓋」
しりとりを始めた2人を、窓からそっと覗いている人物がいた。
大谷だ。
大谷は2人のやりとりを見てヒッヒと小さく笑うと視線を外しその場を離れた。
「…ッ」
船室から離れてきたところで長曾我部に鉢合わせたが、大谷はちらと視線を飛ばしただけでそのままふよふよと離れていった。
長曾我部は立ち止まってそんな大谷を目で追った後、石田の船室に近づいた。
中からはこんな声が聞こえてきている。
「ち、ち、ち…!父!」
「近道」
「あーもうぅぅっ!!」
「貴様の番だ、早くしろ」
「ち…?!致死!」
「質」
「ちー……千歳!」
「設置」
「またち!」
「…何やってんだ?」
しりとりに白熱している2人に、扉を開けた長曾我部はぽかんと2人を見た。2人の視線が同時に長曾我部にむく。
「長曾我部さん。…あ、人名は駄目だったえーと…ち……」
「…何の用だ長曾我部」
「いや、用っていうか…船酔い大丈夫なのか?」
「こいつと話していたら紛れた、だから話している」
「知恵!」
「叡智」
「早いぃ!!」
「…会話なのか?」
「しりとりだ」
「しりとり?」
石田は興味を無くしたかのように長曾我部から目を逸らした。長曾我部はしりとりがよく分からず、頭を捻っている。
「秩序!」
「幼稚」
「ち、ち、ち、知能!」
「、うさぎもち」
「地下!」
「価値」
「ち、ち…血合い!」
「命」
「地位!」
「生血」
「地域!」
「吉」
「ちー…違い棚!」
「な………仲立ち」
「……おい石田、何となくどういうもんなのかは分かったが卑怯じゃねぇか?」
なんでも、ち、で返す石田に長曾我部は見兼ねてそう言った。その言葉に、何故か村越が首を振った。
「なんでも、ち、で返すのも難しいんですよ。契り!」
「立地」
「今度は負けませんよ!力水!」
「ず…いいち」
「知己!」
「…気持ち」
「ちー…。!乳兄弟!」
「…………………」
「!!…十ー九ー八ー七ー」
「…ちっ。家」
「やたー!」
「…楽しいのかお前ら…」
置いてきぼりにされた長曾我部は頬杖をついて小さくため息を吐いた。